コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] モロッコ(1930/米)

淑女の客にキスする男装のディートリヒクーパーの中性的な美しさ。頽廃感蔓延するLGBTのニュアンス。こういう映画は21世紀には撮られなくなるのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







歌姫のディートリヒはsuicide passenserと呼ばれるが、兵隊のクーパーだってそんなものだ。外人部隊は当時すでに虚しい存在と見做されていたことがフィルムから伝わってくる。この題材をフランス映画が逆輸入したのが面白い。本作は植民地支配が大戦前にすでに制度疲労を起こしていた動かぬ証拠である。

冒頭、アドルフ・マンジューから渡されたアドレスをその場で千切るディートリヒの格好いいこと。続く、高低差を活かした舞台の撮影がとてもいい。両名のやりとりに周囲の観客が沸くのが愉しく、頽廃感もまた増している。連続される木漏れ日の描写はクロサワは大好きだったのだろう。戦闘シーンはなぜか平凡。

ラストは抜群で力があり、スペード型に空間を切り取る門が効いている。兵隊の後をついて行く女たちの護衛部隊とはすごい話で、これは事実なんだろうか。元祖ヤルセナキヲの世界だ。ディートリヒが焼けた砂の上を裸足で歩くのはあり得ない、という批判が公開当時にあったらしいが、どうでもいいことだと思う。兵隊さんの彼女はいつの時代も一番不幸だ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。