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[コメント] 三たびの海峡(1995/日)

今や韓国人徴用工を扱う重要作品。三國連太郎渾身の力作で、南野陽子の脱力した戦争未亡人が素晴らしい。さすがにアンゲロプロスを経た時代らしくベタは少な目、キャメラは引きの構図でクールに纏める。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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徴用工の酷い扱いはよく記録された。まあこんなもんだろう。別の仕事で雇われたのに炭鉱夫、方針変更じゃですまされ、日本人のいかない危険個所に行かされて泥水まみれ。入墨者の指導官に始終殴られ給料は強制積立で国元に送金もされていない。労務助手に誘われて「同胞を青竹で叩くぐらいなら泥水につかって石炭掘ります」。本作は国の関与は全く語られず、ただもう企業の非道が指弾されるが当然だろう。国が関与していないからヨカッタノダ、みたいな報道はおかし過ぎる。そして隆大介は政治家に転身する。この人は特定できる人物なのではないのか。原作も読んでみようと思った。

工員たちの墓を守ろうとする三國の動機はとてもよく判る。エンタメなクライマックスだが、このくらいのことあっていいだろうと思ってしまう。あれほど無茶されたのにコリアンたちが8月15日にバンザイするぐらいで戦後反撃しないのは、劇中も語られるが実に理性的である。この最後の対決、中間色の色彩調整の元よく撮れている。建築物もシュールだ。長峰という地名は架空か。

市長選挙の当選者は翌日は初登庁の儀式とか色々するもので、その辺略されているのはいけないし、演歌の挿入歌はもっといけないことで南野の件が汚されてしまったのが残念。チマチョゴリの南野が別嬪。日本人で在日コリアンの不幸を味わった特異な存在ということになるのだろう。社長にまでなった三國が、亡くなるまで南野を探さなかったのかは映画の尺では舌足らずで疑問が残った。張本勲がアドバイザーと表記される。

(評価:★4)

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