コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 砂漠の流れ者(1970/米)

コンボイ』と並ぶペキンパーのヒッピーもので、「破滅の美学」のその先を描いてさらにいい。伝記映画『情熱と美学』で監督は本作を自身の最高傑作と語っていた。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







イージー・ライダー』では開墾しても作物の育たない痩せた土地のリアリズムで、ヒッピーの限界が予告されていたのだったが、本作はちょうど正反対で実に楽天的なファンタジー。泉が沸く、とは欧米人にとっては『聖処女』『処女の泉』が想起される宗教的な含意。そして折よく(悪しく)偽牧師のデビッド・ワーナーが登場する。登記所はえらく簡単に所有権を与えるし、銀行屋はえらく簡単に金を貸す。漫画風だが漫画風に理想が語られている。

「町のなかでは俺はカスだ」と諦念を吐くジェイソン・ロバーズへの共感でもってこのアウトロー映画は成立している。そして全員がチリジリバラバラバラになる、やるせないラストに至るが、この休憩所は引き継がれて生き残ったのだった。侮辱された相手は殺してもいい、というエモーションは最後、復讐の連鎖を断ち切って終わる。ペキンパーの通俗イメージとは正反対の、とてもいいラストだった。

いかにもヒッピー系フォークが3曲歌われる。ホークスの昔のC&Wとは違う世界であり、本作が西部劇でないことを示している(西部劇とは端的に云ってC&W映画だ)。Richard Gillisというシンガーはこの映画でしか知られていない由。

冒頭トカゲが銃で破壊されるのは『ワイルドバンチ』冒頭の蟻の自己引用か。蟻とトカゲぐらいタッチに違いがある。ステラ・スティーヴンスのピンナップガール風情もとてもいい。『ゲッタウェイ』も候補だったがマックィーンに断られたという逸話がDVDの付録で語られている。彼女の胸元へのショット連発とか、笑う紙幣のキャラとか、ドタバタ風の早回しで走るショットの連続とか、序盤は分割ショットもあり、実にノンシャランに撮られている。スローモーションは一か所だけあるが暴力シーンではなかった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。