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[コメント] レット・イット・ビー(1970/英)

仕切る気なしのジョン、出しゃばるポール、捻くれるジョージ。終わってしまった人間関係。でも楽器を手にすれば対話が成立していた。音楽はいいものだと思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実に下手糞なリハから始まる訳で、これがオールディズで肩慣らししてエンジンがかかりだし、セッション重ねる度に思わずと云った具合に熱がこもっていき、ルーフトップ・コンサートでは見事に充実した音になる。この過程を映画は意図的に編集しただろうか。多分そうではなく、このまんまだっただろうと思わされる。

冒頭ではハチャメチャなDon't Let Me Downが屋上では完璧になっている。ただ、屋上でもGet Backでのジョンのリード・ギターは外しまくりだ。最後のジョンの有名な「オーディションには合格したかな」とは、一般に云われるこの企画に向けられた皮肉、というよりも、自分のギタープレイへの自嘲に聞こえる。

楽曲が完成形に向かうドキュメント、とはストーンズ『ワン・プラス・ワン』(68)の方法そのまま(あちらは一曲だけだが)。興味深いことに、ゴダールが付加したブラック・パワー演説に対抗する描写として、本作にはルーフトップ・コンサートへの警官隊突入がある。屋上で奏でられるのがジョンのソロ曲だったら、もっと趣旨は鮮明になっただろう。ビートルズの楽曲はその点途中経過の印象が残る。

映画が生演奏、レコードはフィル・スペクターの編集、として聞くと、フィルが何を採用して何を不採用にしたかが判ってとても面白い。Two of Usのアウトロのジョンのノンシャランな口笛は、いいメロディだけ繰り返して採用されているし、上記のジョンのギターは当然差し替えられている。

(評価:★4)

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