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[コメント] 英霊たちの応援歌・最後の早慶戦(1979/日)

自分の戦争映画を格好いいと云われて困った、と語る監督の映像インタビューがDVD付録に収められている。その通りだと思う。彼は戦争を格好よく撮り過ぎた。彼の語る厭戦の思いは、彼の映画からは伝わってこない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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戦争を恐怖する者がないのも喜劇映画ならではで、元落語部員山田隆夫のドタバタなどこの監督らしい喜劇連発は、軍隊を愉しんでいるように見えるのが良し悪しだ。山田を含め、本作には学生野球派閥以外の飛行兵たちの居場所がないように思うがいいのだろうか。

国民は黙って事態に処した系の特攻もの。永島敏行以下、学生のくせに何の批判精神ももたず、特攻に積極的な姿勢なのが過去の特攻映画との差異だろう。学徒動員の兵隊はスピノザかカントをポケットにしのばせるのが定跡だったが、運動部員はそんなことしないのだろう。既存の学徒ものへの批評があったのかも知れないが、上手くいっているとは思われない。

吊り床(ハンモック)降ろしの作業がやや細かいのがいいのだが、その辺の廃屋使ったような美術は予算不足が如実。前夜の無礼講は恒例。『モロッコ』状態の大谷直子は何か無理矢理だが哀れ。

なんでも肯定すればいいってもんじゃないだろう。「ナイスボール」とか云って野球のボール握って特攻、トランペットのロングトーン、みたいな演出はドン臭い。応援するなよと思う。最後は血まみれになって死にゆく特攻兵たち。しかしこれを厭戦描写と観る人もいれば、格好いいぜと好戦描写と観る人もいる。岡本監督はその辺、ずっと考え違いをしていたと思う。

(評価:★2)

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