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[コメント] プレイス・イン・ザ・ハート(1984/米)

見処は風俗描写であり、特に綿花摘みの詳述は素晴らしく、記憶に刻み付けられた。今後は綿花摘みと云えば本作を思い出すだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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他も庭の竪穴シェルターとか、沸くと笛吹く薬缶(35年にもうあったのか)とか、いろいろ愉しい発見がある。

作劇は姉夫婦の不倫噺がいかにも余計で邪魔。当然そんなもの全部削除してサリー・フィールド一家を詳述すべきである。そうすれば綿花栽培ももっとたっぷり見られただろうし、ダニー・グローヴァーとサリーの息子の交流などもっと繊細に描けただろうし、テキサス州の黒人差別も立体的に捉えられただろう。それが必要な映画だろうに。

頭巾かぶったKKK団を盲人のジョン・マルコヴィッチだけがその声で村民だと見破っていた、という描写はクレバーで記憶に残る。しかし、どうなんだろう。ラストは『8 1/2』系の村の人物総出演で、教会で「愛をもってなせ」などとコリント書が読まれ、そこに死んだ亭主と殺した(そして私刑で報復された)黒人少年が仲良く並んでいて、ある種の理想が示されている訳だが、その教会にはKKK団の面々もいるのではないのだろうか。いるのであれば、こんな軽い解決でいい訳はないし、いないのであれば、KKKを教会が排斥してもいいのかとなるだろう。このような大団円を村全体で謳うには、語り残された事柄が重すぎると思われる。

サリーの造形はとても素敵(その佇まいはリリアン・ギッシュを想起させる)だが、綿花摘みの強行を「これは賭けよ」と云って、それで成功しちゃう劇画タッチは『クレイマー』から随分な後退で不満、話が軽くなってしまった。アルメンドロスらしさは『天国の日々』と比ぶべくもなく、多分低予算映画の割には頑張っていると云うのが正しんだろう。

以下は瑣事。あの嵐の件で「竜巻よ」とみんな叫ぶのが不思議だ。それならなぜ竜巻の描写がなかったのだろう。竜巻というのはあっという間に通り過ぎるもので、シェルターに入る閑などないだろう。その割に各戸の硝子戸に雨戸がない(ないしはあっても使用しない)のも不思議だ。あれはただの嵐で、字幕のミスなのではないか。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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