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[コメント] 五人の斥候兵(1938/日)

今に続く保守派が大好きな本邦戦争映画のプロトタイプであり、風呂屋のペンキ画のような忠孝の物語が臆面もなく展開される。ヴェニスから届いた宣伝大臣賞は本作がプロパガンダであるとはしなくも暴露しており滑稽。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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冒頭、兵隊が中国人の身振りを真似て滑稽に蛮刀を振り回し、これも接収した西瓜を切る。侵略戦争だと早々に曝している。盧溝橋事件の翌年制作。

緩急巧みな実に上手な映画であり、クリークや沼を活用した戦闘場面など抜群だし、シルエットの詩情は美しい。才能の無駄づかいと云う外ない。ただ、兵隊たちの疲弊感は亀井文夫のドキュメンタリーに比べると薄く、リアリティを欠いている。キネ旬によれば原作の高重屋四郎は田坂のペンネームであり、彼は本腰を入れて本作を撮っている。「私は戦争が好きなんです」という発言も残されている。困った戦中派につける薬はない。

ラストの「君が代」は歌詞の意味を余りにも正確に伝えており、「海ゆかば」なる葬送の軍歌を歌いながらの出陣は悲壮感も最高潮。死んでも突撃の精神は戦争の作戦として愚かであり、天皇の兵隊を無駄にしたくないという小杉勇の中盤の真っ当な発言と真っ向対立する。真っ当を覆しても聖戦遂行なのだ。忠孝の精神でこれに粛々と従う下級兵たち、とはとんでもない嘘八百であり、こんな肝心な処を詩情で扱われたのではたまったものではない。

(評価:★1)

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