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[コメント] マタンゴ(1963/日)

野上彌生子「海神丸」(新藤『人間』)+イヨネスコ「犀」。収束の畳みかけが実に見事(含「犀」のネタバレ)。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そのために中盤間延びした処があるが、なるほどねという処で遡って全然許される。

久保明の「私をキチガイだと思っているんでしょう」みたいな導入は実に初期SFっぽい。なんで歓楽街のネオンサインのなかに精神病院があるのかよく判らない。この精神病院もいい加減な処なのだろう。

ボートの金持ちなんぞ全滅してもいいといういい加減な初期設定だが、それにしてもガス人間土屋といい久保といい、なんて奇怪な俳優たちだろう。土屋の毒きのこ喰らった幻覚がネオンライトともる姐ちゃんたちのショーダンスという連想の貧しさは実に嘆かわしい本邦の精神世界の風刺であった。

キノコは当然、逸物が連想されるのであり、佐原健二が説く欲求不満説を具現化している。キノコ生えた自分の顔を見たくないから「鏡がない理由が判ったでしょ」という指摘が実に鋭い。「あいつら半分キノコだ」「でもここで生きてゆくには」という切実な対話は、周囲が犀になってゆくイヨネスコ作を彷彿とさせる。イヨネスコ作では彼女が犀の美しさに目覚めて自分も犀になりたがり、肉体美とファシズムという主題が浮かび上がるのだが、その点本作は正反対なのだった。

照明彩光は初期カラーらしく下手糞でセットとロケの違いがすぐ判って興覚めだが、そんなことはどうでもいい映画だった。八代美紀は演技下手だがすごい可愛い。

(評価:★4)

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