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[コメント] アフリカの光(1975/日)

「話のない話」の奔放なタッチで萩原健一田中邦衛のホモセクシャルが描かれ、傑作『恋人たちは濡れた』の続編のよう。ここでも姫田は最高である。
寒山拾得

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神代は色んな演出の抽斗を持っていた監督だが、この手法が最高だったのではなかろうか。ベストショットはショーケンのひとり芝居における「あ、屁が出た」だろう。物語を律儀に語ろうなんて気はさらさらなく、全てを冗談にし続け、冗談にならないものは切り捨てる。ショーケンはそういう倫理観で一貫している。

そもそもアフリカへ行きたい(遠洋漁業がしたい)のに北海道で足止め、という導入もネタでしかなく切実感がまるでない。貧困の主題はもうかき消えていて求心力がなかったのだと確認できる。本作はフォニーであり、それを隠していない。

小池朝雄峰岸徹が漁村の物語を持ち寄るのだが、ショーケンはこれらを排除しにかかる。高橋洋子との関係もラストで投げ出される。最初から前衛なのではなく、語りかけていていたのを途中で投げ出すのだ。なんちゅう演出プランだろう。中島丈博のホンも丸山健二の原作もズタズタにされているのだろう。それでいて、なのか、それ故に、なのか、本作は実に充実している。

そして本作の姫田撮影は最高だ。冒頭の桃井かおりとの出会いの重厚な酒場シーンから、最後の雪景色の客車に至るまで、全て充実している。

(評価:★5)

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