コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キング・コング(1933/米)

この児戯溢れる特撮は極上の完成品であり、発展途上と捉えるのはつまらない。例えばノルシュテインは青年時代に本作に猛烈に憧れたに違いないと思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







コングの背丈があんまり高くないのがいいし、画面の奥の方から異常な加速で前面に飛び出してくるスピード感がいい(突然駆け出す犬など想起される)。コングと対決するティラノザウルスが長い尻尾をうねうね振るショットはセクシーですらある。

後半に行くほど加速する演出は達者なもので、描写をスキップさせる編集力の賜物と見える。コングを海上どうやって運んだか、みたいな説明ショットはばっさり略される。撮影隊一行が原住民といつ味方になったのか判らないのは小さな瑕疵だが、説明するのがタルい、という判断だとしたら大正解だろう。

序盤の緩やかな筋運びは後半のスピード感を際立たせて効いている。甲板上でのフェイ・レイの絶叫の練習は、お前はこれからコング同様に見世物になるのだ、というニュアンスが感じられどす黒い。続く島上陸に向かう際の音楽が密やかでとてもいい。名匠マックス・スタイナー初期の傑作でもあるのだ。

コングの掌中にあるフェイ・レイは明らかに古来の妖精の描写が模写されており童謡のようで、乱暴な描写との落差が見事に決まっている。巨大な門扉はなぜかサイレント期の大作に多く観られるもの(『イントレランス』など)で、それらのイメージの反復があるし、大都市編の突き抜けた異様さはムルナウの『最後の人』が想起される。白人美女に憧れる異邦人を白人が撮った、という裏主題もまた禍々しいものだ。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ ぽんしゅう[*] DSCH

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。