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[コメント] ペーパー・ムーン(1973/米)

愛らしいコメディの極めつけ。他に書きたいことがあんまりない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







と云いつつくたくた書く。

DVD付録のメイキングでこのお喋りの監督が強調するのは、広角レンズと大量の照明で全てにピンが合った撮影、ワンカット長回しとテイタム・オニールの主観ショットの効用。モノクロは無論、監督の選択。金髪に青い眼のオニール親子をカラーで撮っては不況の30年代の映画にならなかったと(テイタムは8歳半が正しい)。路上に展開される不況描写の断片は『怒りの葡萄』を回想している。ラストは原作にはなく、撮影中に捻り出された、とは本当だろうか。

このラスト、腐れ縁的に惹かれ合うライアン・オニールとテイタムを具体的に結び付けるのは200ドルの借金返済。とてもいい反復ギャグだが、それ以上のリアリティがある。腐れ縁の人と人を具体的に結び付けるのは何らかの負債関係であり、この関係を冗談めかして続けるのが人生というもので、それなしには人の関係は消えてしまう、と語っているかのようだ。例えば世の夫婦ってそんなものなんだろう。チャップリン好みの原初的に何もない一本道の舞台がとても効いている。

四半世紀振りに再見。マデリーン・カーンが野原で座り小便をするという記憶は間違っていたが、あっても良かったかも知れない(下品に過ぎるだろうか)。彼女がテイタムに語る開けっ広げなオンナ指南が見事な中盤のクライマックス。続くP・J・ジョンソンを優しく救い出すドタバタで、成功を知ったテイタムが一瞬示す陰翳が素晴らしい。天才子役には敵わない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 週一本

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