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[コメント] いちごブロンド(1941/米)

ある種極めつけの小市民賛歌。良質のハリウッド喜劇らしく喜劇が転がりに転がり続ける。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ジェームズ・キャグニージャック・カーソンに騙されて借りた馬車返す件、金がないと云ったらホークをさっと差し出される、みたいなサイレントタッチがとても愉しい。怪我の治療に蛭を使うのはどこまで本当なのだろう。歯医者の通信教育という設定が素晴らしく、親父のアラン・ヘイルを治療して笑い死にさせかける件などケッサク。刑務所入っても勉強続けているのが笑えるし、ここまですると切々としてくるのが巧い。

原作もいいのだろうし、エプスタイン兄弟の代表作でもあるのだろう。科白も面白い。ギャグニーが逮捕された処をオリヴィア・デ・ハヴィランドに見つかって一言「警察のハマグリ大会の相談を受けたんだ」とか、リタ・ヘイワースがクライマックスに意味もなくついてきて訳を聞かれての返答「生活を劇化するためよ」とか、そこら中でアメリカン・ジョークが炸裂している。

全体にはいろいろ苦労したギャグニーの物語だが、その中心にいるのは奥さんのオリヴィア・デ・ハヴィランド、という位置関係が麗しい(このふたり、ディターレ『真夏の夜の夢』のコンビ再演なのだった)。娘時代から良妻までを演じて好感度大、変なウィンクから始めて、真っ直ぐな瞳がとてもいい。この役柄なら美人過ぎただろうけど(比較されるべき本作のリタ・ヘイワーズはなぜか美人が余り目立たない)。

ただまあ、無いものねだりに近いんだけど、この時代らしい中産階級志向が端々に見えるのは個人的には詰まらない。女性参政権論者が揶揄されるのは本作に限らない(『メリー・ポピンズ』(64)でもまだ揶揄されている)が、いま観ると常識を疑ってしまう(アメリカの女性参政権は1919年からであり、本作の時代設定はこれ以前ということになる)。無論この辺りは時代背景として割り引くのが定跡だが、本作ではこれがオリヴィアの造形の真ん中にあるから困る。

最後に歌詞付きで主題歌をもう一度聴かせてくれるのは小市民賛歌が極まっており、なんかやり過ぎ。尻の穴が痒くなり、洗脳されているのではないかと引いてしまう。なお、ジャック・カーソンが民主党員であるのは今なら共和党員になる処。両党の立場は確か世界恐慌の頃から逆転しはじめたはずで、この設定も10年代のものなのだろう。

(評価:★4)

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