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[コメント] 今日限りの命(1933/米)

ロバート・ヤングの突然の老成、ジョーン・クロフォードの胸を打つ倫理観。確かにこれはフォークナーの世界だ。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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前半がどうにも深みがないのはジョーン・クロフォードの二股(ロバート・ヤングゲイリー・クーパーの)に説得力がないからだろう。子供の付き合いの延長でヤングと婚約した後にクーパーを恋した、ということなんだろうが、伝わってこない。クーパーとのサイクリングの件は爽やかに撮られているが、これだけでは愛情云々は示せていない。

クロフォードは本作撮影時に29歳か30歳であり、本作のまだ恋を知らなかった少女という役処には無理があっただろう。クーパー再登場もイマイチだし、空爆の特撮も相変わらず上手いものだが、悩めるクロフォードを捨てておいてやたら陽気に展開される調子が余り上等とも思えない。

しかし、ロバート・ヤング失明から物語は急激に盛り上がる。ボートで接近・魚雷発射の件は見事な撮影で、ヤングを失明させる閃光が凄まじい。少年から老成へ一気に進むヤングの造形の転換は見事で、フォークナー的人物の深みを一挙に身に纏う。涙を拭いながら彼に語るフランチェット・トーンが泣かせる。

失明を知って間髪をおかずクーパーを諦めヤングに寄り添うのを決意するクロフォードがまた素晴らしい。この逡巡のまるでない決断が本作の肝、人の不幸に寄り添うのは人として当然と語っている。

本作も欧州の第一次大戦ものとして、同時期のフランス映画のニヒリズムと呼応している感触が残る。ただラストの人間魚雷は大衆娯楽タッチでやり過ぎだと思う。

(評価:★4)

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