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[コメント] 次郎物語(1941/日)

話は定番を出ないがキャメラがとてもいい。絵心に溢れときに意欲的でミゾグチを彷彿とさせる。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







次郎が翌日旅立つ杉村春子と並んで夜祭に行く件が素晴らしい。川沿いの延々の横移動に続いてクレーンで俯瞰の夜祭、それからキャメラは下降して正面からやって来る二人を捉える。横移動が突然正面向きになるここが抜群に決まっているのだがまだ長回しは続く。次郎は買ってもらった天狗のお面を川に落とし、キャメラは川を流れるお面を追い、お面は杉村に拾い上げられて次郎の手に戻り、狐が踊っている舞台に至る。

翌朝のシークエンスもいい。次郎が起きると杉村がいない。次郎は屋敷のなかを探し回る。キャメラは激しいパンを続ける。これは次郎の主観だろうと見ていると、フィクスになったキャメラが捉えた庭先を次郎が相変わらず杉村を探して歩いているのだ。これには驚いた。そして次郎は天狗のお面をつけて橋に佇み、お面を川に捨てるのだった。

その他も幾つもいいシーンがあった。死の床にある村田知栄子が杉村を遠方から呼び寄せて待ち、ああ来たのねと呟いた後に杉村がひょっこりと現れるショットも、次郎が神社から駆けだしてきて倒れる縦構図も冴えている。序盤の杉狂児が転落する川はとても浅いのだが、大丈夫だったのだろうか。ここの画もとてもいい。

話は村田の母親の改心(冷たかった息子に優しくなる)がどういうプロセスを踏んだかまるで不明なのは明らかな欠点(清水宏版もそうだったけど)。しかしあんまりにも不明なものだから、人の心は測りがたいという感慨を覚える処がある。40年代前半作だが国策色はなく、立身出世主義は胡散臭いがまあ戦前の常識、原作のものだろう。本作、調べたらキネ旬ベストテンの第6位だった。順当と思う。

(評価:★4)

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