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[コメント] 日本万国博(1971/日)

網羅的で細部にいろいろ発見がある丁寧な記録。サンフランシスコ館の館長が姉妹都市大阪市の式典に参加して中馬市長に記念品を渡しているのは、次回の万博では再現されない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







・建設現場の地鎮祭、発破、ショベルカーの土地掘り返しも短いがしっかり記録されている。当時の活劇でこの現場を舞台にしたものがあったが、何て映画だったか。環境破壊をテーマとしたパビリオンが多かったのだが、この舞台自体が環境破壊でもって成り立っていると記録している。

・アフリカが元気に見える。当時14か国が独立とある。序盤はアフリカンミュージックの紹介が多くて愉しい。AAOCみたいな演奏もある。横並び一線だからこそ拾い上げてくれた宝物という気がする。万博は本邦にワールドミュージックをもたらしたのではないだろうか。「お面は神の力を借りようとしたものだ」太陽の塔から全共闘のヘルメット青年が手を振っている。よくこんなものまで撮ったものだ。どれだけフィルム使ったのだろう。

・マルチスクリーンで複数の映像を流しっぱなしのパビリオンが多い。大勢の行列のため立ち止まれない。情報が溢れて処理し切れない体験。私も覚えている(小学一年生だった)。恐怖体験に近かった。みどり館では「全天全周映画」、床以外は全部スクリーン、シネラマの12倍。高速を自動車が走る映像など。

・行列を見てナレーターの石坂浩二曰く、「忍耐が今日の日本を築いたエネルギーかも知れません」「そうかしら」と女性アナの茶々。

・ソ連館は4時間待ち。レーニン生誕100周年、労働者の像、チェーホフの眼鏡、チャイコのピアノ、ガガーリンの人工衛星。アメリカ館もとんでもない行列。ソ連館と人気を二分とある。インディアンコーナー。軽石のような月の石。これを眺める小学生が鼻くそほじくっているのを、映画は永遠に記録している。反米のニュアンスが感じられる。

・コロンビア大使館がペルー大地震の募金を行っている。ベトナム、パキスタン、ラオスの戦争が気遣われている。中華民国館には孫文の宣言が掲げられている。中国は当然不参加。カナダのブリティッシュコロンビア館はモミの木からできており、樵が競争して登っている。タイから象の大群が公道通ってやってきている。

・会場滞留者35万人とのアナウンス。累計13万人が迷子。テレビ電話は迷子探しに活躍。終盤に入場者は一日83万人。佐賀県の人口並だと石坂浩二が唸る。

・すでにあるもの。ファックス。ペプシ館の撒くミスト。日本館ではリニアの模型。完成すれば東京大阪間が1時間10分とある。ガスパビリオンの面構えは最高に愉しい。五重塔は古河パビリオン館。日本美術館は弥勒菩薩像や鑑真和尚像まで並び、何げに凄い。他に興味がなくてもここだけで一日過ごせるだろう。5000年後のタイムカプセルに入歯や下駄。世界人口35億、世紀末には70億の予想と云われる。

・まるで手塚治虫の漫画のように、戦争ごっこをする国の子と、戦争渦中の国の子が対比される。テーマは人類の進歩と調和だった。閉会式。

(評価:★4)

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