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[コメント] 続・座頭市物語(1962/日)

城健三朗の不出来な造形に目を瞑れば悪い映画じゃない。バカ殿様の按摩をしたから命を狙われる、という喜劇的な導入からしてすこぶるいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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城健三朗の造形は貧しい。市の取られた恋人噺など、ばら撒かれた前振りがクライマックスに一挙に明らかになる仕掛けは一応あるんだが、前後の脈絡が繋がったからと云ってどうというものでもなく、さすが兄弟、若い頃は顔が似ているなあという感心しか惹かない。霞む城に比べ、太陽族風な軽薄な連れの中村豊のほうがインパクト大で印象に残る。

この失点が致命的だが、その他はいい映画。バカ殿様の按摩をしたから命を狙われる、という喜劇的な導入がすこぶるいい。モノクロ撮影はシリーズ最後のようだが、この晩から提灯が乱れ飛び、最後の晩に市が潜った河川捜索に再び提灯が美しく灯る。ただし、次回以降の大映カラーは渋くていいものなので、モノクロが棄てられるのがあんまり惜しいとは思われない。

市による天知茂の回想モノローグも悪くない。やり過ぎは無効と制作者周知のうえでの掟破りだっただろう。あと、序盤の「あたしの父も目暗だったけど女房を三度も取り替えたよ」の水谷良重との情交が、海際の逢引き場所含めて、いかにもカリソメな刹那感がいい。私的ベストショットは船で旅立つ市を海の中へ歩み出て見送る水谷の件。

ラストシーンの沢村宗之助惨殺の唐突さは、私はたいへんに気に入った。冒頭から敵討ちに追われている市、終盤にお寺の小僧さんに再度助けられて、因果応報の呪縛からの脱出を半ば成し遂げたかに見えたのに、この暗転。因果応報は続くのだ。本作のシリーズ化は『宮本武蔵』や『大菩薩峠』と認識を一にしたものである、とここで森一生は刻印を押している。

(評価:★3)

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