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[コメント] 真実(2019/日=仏)

「産んだら誰でも母親になれるの?」 「生まなきゃなれないでしょう」。前作で掲げたクエスチョンの回答に、是枝は近づけたのだろうか。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







万引き家族』で安藤サクラが発した「産んだら誰でも母親になれるの?」を、是枝は信じていない。産めば確かに生物学的な母親にはなれるが、「本当の」「真実の」母親とは何かという疑問は未だ残している。

ファビエンヌは7歳の時に母親を亡くしている。それからは恋多き女優として映画界に君臨してきた。一方のリュミールは女優をあきらめて脚本家として売れない男優と暮らしている。

二人は正体不明の「サラ」の存在を軸に、それぞれが言えなかった不満を少しずつ漏らしてゆくことで和解へ向かうのだが・・・。

ダメ男ハンクは、アル中ではあるが、少なくとも良い父親「をやっている/であろうとしている」。ハンクはシャルロットを産んではいないが子どもに愛情をもって接し、大切にし、向き合っているではないか。ファビエンヌはリュミールを産んだが、女優であり女性であることがアイデンティティなのだ。

良い母親、良い父親、理想の家族とは何なのか。

リュミールはサラに母親像をあてはめ、それを感じたファビエンヌがサラに嫉妬した結果母娘の仲はぎくしゃくしてきたのだが、若い女優マノンにサラの面影を見たファビエンヌが、迫真の演技で涙を見たことで、サラ・母親・自分自身の生き方までも見つめなおしてゆく。このストーリーは良いのだが、劇中劇がどうもしっくりこない。そして安易なラストが肩透かし。

老いというものは徐々にやってくる。水滴がポタッ、ポタッと知らぬ間にグラスを満たしてゆく。「もう会えないかもしれない」。ファビエンヌはグラスがいっぱいになりつつあることを痛いほどわかっているのだ。だからこその和解なのだろうか。

イーサン・ホークと子役がとても良い。家族にはそれぞれ役割があるというお手本になっている。

(評価:★3)

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