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[コメント] サムライ(1967/仏)

ただの「クールで寡黙な殺し屋」では言い表せないキャラクター造詣の見事さ。グレーとペイルブルーの部屋で、小鳥が傍らにいる無言の約10分間。この10分の間の所作と部屋のしつらえでこの男の孤独と精神的緊張を強烈に印象付ける演出の上手さ。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
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例えば撃たれた腕のかばい方であるとか、キーを差し込む際の視線や、車の運転技術など、さりげないようで実は細部にまで目の配られた演技もよい。

ボルサリーノ帽のつばに指先を添わせフィット感を確認するしぐさは刀を確認するサムライのようだ。

さらに雨に濡れるトレンチコートの肩であるとか、白手袋などの小道具も冴えている。 これらはサムライたる儀式のようでもあり、偏執狂的な男の生き方を的確にとらえている。

盗聴器のスイッチが切られたことが小鳥のさえずりを上手く生かしている点も緊張感が持続するし、鍵束や、傷の手当のガーゼなどの収まり方も神経質な男の一面が瞬時にわかる。盗んで走らせる車がシトロエンDSであるとか、震えがくるヤツです。

警察の数回の尾行の失態も、一匹狼ならではの技として魅せてくれるし「俺は絶対に負けない」と言わせる自信の裏付けでもある。

そして、ピアニストカティ・ロジェのもつ雰囲気が作品のレベルを高めていて、キーパーソンたる存在感がある。

プロダクションデザイン、テンポよい進行、演出、俳優、言うことなしなのである。何度見ても飽きない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)3819695[*] ゑぎ[*]

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