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濡れ鼠さんのコメント: 更新順

★5凱里ブルース(2015/中国)貴州は未踏だが、孟族の国は越中国境で馴染みがある。峰巒重畳たる低山の風景、坂と階段の多い町、崖際や山裾の高低を活かした建築など目を楽しませる被写体が多い。伝奇のリアルへの蚕食、騙し絵的な背景幕、滴・蒸気・汽笛の魔術的な表現、無意識にそよめく囃子声、絵巻物のようにパンするカメラ、個々の背中を追って町の動脈を行き来する移動撮影、譫言のような詩の朗読など先人の影響は明らかだが、病みつきになる魅力がある [review][投票]
★4呪われた者たち(1962/英)ビーチリゾートで暴れ回るバイクギャング団、丘向こうの軍の秘密基地、海中洞窟に隔離されたフリークキッズラボ等々、なんだかAKIRAの第一巻みたいな話だなあと思ってみていたが・・・風光明媚な港町の華やいだ空気と断崖絶壁のある高台の立地を駆使してダイナミックに展開する前半の追走劇と変人兄妹の確執のドラマは流石に見応えがある。反対にSF的想像力の貧しさの虜囚となった第三幕は学芸会の出し物のような白々しさ [review][投票(1)]
★3若妻・恐怖の体験学習(1972/英)監督・脚本は『恐怖の牝獣』『パラノイアック』の脚本担当者。撮影は後者でお馴染み。秀作/佳作揃いのハマーの心理サスペンスシリーズ最終編(第十品)。ということで、世評はあまり芳しくないが、万が一にもと淡い期待を抱いたものの・・・確かにプロットは英国ミステリの名に恥じない出来で、小粋な落ちにも感心させられた。しかし、例えば、セス・ホルトやF・フランシスに比べると場面構成力の面で数等見劣りするのは否めない[投票]
★5真昼の不思議な物体(2000/タイ=オランダ)文明の夜明けに世界各地で見られた神話発生の坩堝を覗き込んでいるようであり、またクノーの「文体練習」に似た言語遊戯が市井の人々に実践されるのに随伴しているようでもある。単一のプレミスの周りで気随気儘に付け足されるのは、各々の人となりと共に生活の息吹きであり、それは、また、様々な表現形態を模索する糸口となる。旅行者が散策がてらに収集したような町のざわめきが、そんな演出家の姿さえ宇内の点景として包み込む [review][投票]
★3マジェスティック(1974/米)小説既読。どうも、脚本担当者と演出家が同じイメージを共有できてないような。E・レナード自らノベライズしたものに比べて全ての面で完敗。タメの按配(特に導入部分と運命の岐路となる局面)。立ち回り/偵察における空間の幅と奥行きの活かし方。主要キャスト5人は役柄とミスマッチな上に面魂が足りない。二人の好敵手の立場が二転三転するうちに地金が出る流れが本作の醍醐味なはずだが、映画はそのあたりの水路づけに無頓着[投票(1)]
★4笑う窓の家(1976/伊)個人的にはジャーロの十指に数えたいぐらい好き。ニ度見すると、さすがに初体験の僥倖は薄まるが、全編に漂うおどろおどろしい雰囲気は瞠若ものだし、超自然を匂わせながら人間の狂気で話をつけるのも腑に落ちる。都会人2人が、頽落した僻地の僻事と迷信から理性の孤塁を守るような展開の閉塞感も心地良い。目を皿のようにする驚愕のラストは、『サマーキャンプ・インフェルノ』とカップリングして楽しみたくなる出色の出来栄え[投票]
★4ディシジョン・アット・サンダウン(1957/米)ランデブの場所で一堂に会するまで、関係者の素行品性と来歴を一筆書きで素描しながら、一気呵成に対立の核心へ雪崩れ込む冒頭15分の手際はサスペンスの鑑のような美しさ。フックとは斯様に周到かつ大胆に構築されるべきと感動する。常に胸に一物ありそうなスコットの無思慮と直情径行が予定調和の一歩手前で騒擾の種を蒔く(意表をつく)。独りよがりなお騒がせ者が不面目なトリックスターとして受容され、翻身を促すアイロニー [review][投票]
★3シャドーマン(1974/仏)同監督最後の長編映画。ジュデックスの脚本家。ゾンビやテンプル騎士団などてんこ盛りだが、焼き直し感は覆い難い。本物の奇術師、ヴァンプの女首領、常連のE・スコブなど華があるキャラに欠ける。セットもチープだし、活劇に潤滑油が足りない。名撮影監督の不在を強く感じる。A très bientôt j'espère. Ah oui, à très bientôt je pense.これが元になったTVドラマを見れる日が来るのだろうか6.5/10[投票]
★4魔界からの招待状(1972/英=米)テラー博士の恐怖』と同じ趣向のアンソロジーだが、SF要素がなくなり特殊効果頼みでなくなった分、憎悪と怨恨が渦巻く葛藤のドラマと運命の不条理により大きな比重が置かれ、英国怪談の旗手として本領発揮な感じ。「クリスマスキャロル」の暗黒版風のものもあれば、脂が乗った頃の乙一が創案しそうなキンキーでシニスターな悪意の舞台装置も出てくる。いくつかの場面のセンセーショナルな戦慄(**)は未だに色褪せていない [review][投票]
★4戦火(1958/米)迎春閣の女将がまだおぼこ娘だった頃。元祖イエローフィーバーと見紛う異人種間ロマンス。こういう気恥ずかしいのは米国人同士は真顔でできない気もするが、文化と言葉の壁が恋の虜になった男女をなりふり構わなくするということで、成否は悉く両者の存在感にかかっている。二人の関係の進展の鍵となる場面はさすがに突き抜けている。ただ、リーホァの人となりに従順で窈窕なwaifu以上のものがあればと時代の制約を感じたりもした [review][投票]
★3カルテル・ランド(2015/米=メキシコ)ロスセタスよりも無慈悲かつ残忍なことで知られるLos Viagraの母体はここで描かれる<Autodefensa>の一派。元番犬が野犬化して狂犬病に罹ったような暴虐の限りと無軌道さは、麻薬戦争の暴力の上限を覆した感さえある。イスラム国を扱ったものもそうだが、この監督の作品は事実のプレゼンテーションの仕方に深刻な問題がある。いかにもスクリプトされた演出の過剰は記録映像の臨場感を煽るよりも損なうことにしか寄与していない [review][投票]
★4ブキャナン・ライズ・アローン(1958/米)国境の町を牛耳る悪徳保安官とゴロツキ紛いの手下達。殺人を犯した男の身を簡単に金で売る町長。現金をもって外を出歩かないように警告する木賃宿の主人。些細な痴情の縺れがたちまち殺し合いへとエスカレートする西部人気質。パルプ小説が原作とはいえ、今日でも国境の南へ目を向ければ、売文家の創作と笑い飛ばせない現実がある。余りにも頻繁に目にするジャンルクリシェがどこまで史実を反映しているのか最近気になって仕方ない[投票]
★4殺人者にスポットライト(1961/仏)遺産相続殺人に相応しい、謎と陰謀の目眩くアラベスクを期待すると拍子抜けするが、同じ監督の後年の作品と同様、おとぎの森や湖畔の古城を使って、素朴な幻想の陰画が試みられていることに合点がいけば、見所は事欠かない。 [review][投票]
★4今日(2012/仏)S・ジャクソン(「籤」)とチュツオーラが密林に篭って七昼夜まぐわり続けたら、こんな異形の姿をした嬰児が呱々の声をあげるのではと思わせる異様な祝祭の雰囲気。西欧化した2世が祖国へ戻ってきたときに覚える眩暈のようなもの。その圧倒的な光のざわめきと大地の脈動の交響が画面の隅々まで振幅させる。自らの象徴的な死を前にした男が思い出深い場所を憑かれたように逍遙する構成は「死者の書」に似た煉獄巡りの心象によるものだ [review][投票]
★4サファイア(1959/英)あまり日本で知られていない公民権運動時代の英国の黒人差別を下地にした社会派ミステリの秀作。刑事の私生活や職場関係でお茶を濁すことなく、捜査の筋道に焦点を絞ったメソディカルな構成と演出に好感。めったに私情を見せないベテラン捜査官の英国紳士然とした挙止と冷徹な眼差しが、ゲットー化したロンドンの裏町に蔓延する人種差別の業の深さを浮き彫りにする。劇伴音楽がない分、ダンスホールの乱舞シーンの高揚感が際立つ[投票]
★4赤の女王は七回殺す(1972/伊)相変わらず英米仕込みのミステリマニアには鼻で笑われそうな杜撰なプロット捌きと定番トリックの二番煎じ(ヘタリアの斉唱が聞こえてきそう)。とりあえず最後まで破綻せずに曲り形にも収束を見せるし、ジャーロの基準では割かし体裁が整っている部類に入ると思う。翻って、美女と古城、スプラッターとヌードショーなどの見所は、もはや職人芸の域に達しており、ファンサービスに手抜きはない。 [review][投票]
★4アモク(1972/伊)サドとマゾッホのみだらで自堕落なパロディのような設定と筋立ては、バーバラ・ブーシェの神がかり的な脚線美を愛でるための口実に過ぎないのだろう。。。すぐに発情する低脳な熊男の前で奥床しげに見せるパンチラは、シャロン・ストーンの恥毛なんぞ霞んでしまう神々しさ。シースルーのランジェリー姿も鳥肌がたつほど悩ましい。舘のダンディな御主人が、あの!F・グレンジャーと気づくまで少し時間がかかった 7/10[投票]
★4映画館の恋(2005/韓国)コルタサルの短編を想起させる。どこへ行っても同じ時計塔が見える深更の街路を盲滅法に駆けているうちに行き着いた家でようやく招き入れられたと思ったら客間で待たされている間に自分がすでに戦場で死んでしまっていることに気づかされる話。ただし、ここでは、ランドマークはTV塔で、煉獄を漂う魂は映写幕を介して(友人による再話の形で)十数年後に蘇生される。同じ不能感、同じ焦がれ、来るべき一切の事物を後ろに引き連れて[投票]
★4あなた自身とあなたのこと(2016/韓国)元ネタらしいブニュエル版にも遜色のない抜群の面白さ。蓮っ葉で、わがままで、飲んだくれで、嘘つきで、人が言うほど美人でもないのにすっかり女王様気取りの女がこれほど魅力的に感じられるとは!灯火に魅せられた虫のように、口さがない友人たちの噂に上る元カノの幻影の周りをなすすべもなく彷徨うしかない駄目男の俯き顔に自分の姿を重ね合わせる人もいるだろう。隣で寝ている相手が幽霊じゃないかと心配になる黎明時分[投票]
★4夜の浜辺でひとり(2017/韓国)最後まで、このすかした女は何者!!?と苛立たせる表面の不透過性と月光病者じみたもたつき/踏外しの重畳。張りをなくした日常の潮目に夢ともまぼろしともつかない異様な光景**が闖入して現実乖離の気配を萌生させる。人を喰った話運びの紆余曲折は、覚束ない足どりで浦淋しい浜辺を遠ざかってゆく傷心女性のくたびれた面影のための前奏だったという闡明。高慢ちきな大女優のマスクを失って、人目から泣きっ面を隠した瞬間だった [review][投票(2)]