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濡れ鼠さんのコメント: 更新順

★5コロンバス(2017/米)建築映画としては、ローマの大聖堂とその作者の生涯を下地にした『La Sapienza』の後に続けて見ると、モダニズムとバロックの様式の違いだけでなく、その背後にある宇宙観の変遷(超越性から内在性へ)まで透けてくるから面白い。建築家が思い描いた世界の<梁と屋根>を虚心になってなぞることで精神に変容をきたそうとするところは、同様に先入観で目を曇らされた男が盲人の導きにより開眼する「大聖堂」**に通底するものがある [review][投票]
★4彷徨える河(2015/コロンビア=ベネズエラ=アルゼンチン)一族郎党を襲った運命の不条理と折り合いをつけるのに、たとえ迷信にしろ、体系的な解釈を必要とするのはギルガメシュの時代から変わらない。そう思わせる悠久の河=意識の流れ。マングローブに覆われた河岸の底知れなさと、緑の壁のように続く樹冠の高み(白黒画面の豊饒さに目を射抜かれる)。聞こえてくるのはオールの立てる音と小鳥の囀りぐらい。異人との邂逅により運命の逆転に掛ける放浪者の悲願。静かだが充実した映画の時間[投票]
★3シティ・オブ・ゴースト(2017/米)ラッカ占拠後の内部映像は貴重。広場へ行くと四六時中人が磔にされており、どこへ行くにもギャングの検問を受けなければならないという恐怖支配の殺気だった空気が生々しい。悪名高いメディアセンター前史も興味深い。親兄弟や仲間がカメラの前で次々と処刑されてゆくのを遠隔の地から見守るしかない活動家達のリアクション映像はさすがにきつい。でも一番えげつないのはドイツに着いてからの反難民デモ隊による歓待シーン 6.5/10[投票]
★3蠍の尻尾に関する殺人(1971/伊=スペイン)消えた100万ドルの行方とか、フーダニットの興味とか、センセーショナルな殺人劇場のお膳立てをするための言い訳に過ぎないことがじきに明らかにされる。そこを割り切ってしまえば、謎解きのための性急な段取りや緩急の意識の低さ、撒き餌のぞんざいな扱いなど(わざとらしい前置きとこれ見よがしなズームイン)、サスペンス演出の手筈の不首尾は気にならなくなる(たぶん)。 [review][投票]
★5オールド・ジョイ(2006/米)本当に我々が大学時代の盟友を帯同して、思い出のハイキングコースを辿り直している気にさせる時間配分。記憶の最もこそばゆいところを刺激してくるショットの瑞々しい喚起力。心からの慨嘆に満ちた言葉とともに紡がれる、無意識の所作と表情の、気配りの行き届いた差配。劇中の台詞「木を通して森を見る」(意訳)を地で行くような、二つの拮抗する細流の出会いとその静かな衝撃を、時代の趨勢の抽出にまで高めようとする思索の跡[投票]
★5ミークス・カットオフ(2010/米)地の果てまで続くような砂礫と灌木の乾いた風景。それが1週間、2週間と続き、あるいはもう何年も経ったのかもしれず、永遠と無限を想起させずにはいない反復の終わりに何があるのか(楽園?神?世界の終わり?)、募りゆく疑念も不安もそのまま、唐突に暗幕が下りる。実際は90分付き合っただけなのに、まるで神隠しにあったような意識の晦冥。このようにして我々はある日自分の死に不意打ちされるのかと[投票]
★5ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(2016/米)ジェンダー・世代・人種/社会グループという三つの不確定要素によって分断された周縁社会の今を生きる女性たちのための新たな西部劇。茫乎たる大自然の只中で拠り所を求める花のかんばせに束の間訪れる羞恥の翳り、信念の結露、多幸感の光輝、当惑の渋み、その崇高さ。まさにその一瞬に向けて、軋轢と和解、挫折と希望、巡り合わせとすれ違いの関係性の構図が、一縷の漏れもない峻厳さで設計される。MWとの三部作の見事な完結編[投票]
★4不審者(1951/米)同じ町(あるいは国)で生まれ育った男女が、偶然異郷の一角で逢着し、思い通りにいかない人生を慨嘆しているうちに寂しさ(あるいは別の思惑も・・・)から不倫関係を結ぶ。世界各地でそれこそ夜空の星の数ほどありそうな話だが、それでも魅せるのはロージーの演出力なのだろう。 [review][投票]
★5ジョゼフの息子(2016/仏=ベルギー)本筋だと思って追っていたものが、大がかりなだまし絵の一部を為す凹面鏡の反映に過ぎず、屋上から地上を見下ろしていたつもりが、逆に自分のほうがさかしまに見透かされていることに気づかされる。悲憤慷慨して思春の森を行き悩んでいた少年が、実は楽園追放の憂き目に遭った者たちの守護天使にほかならないことが明らかにされるラストショットのあの瞬間。実人生でも普通にありそうな移行のさり気なさにはっとさせられた。9/10[投票]
★4オクジャ okja(2017/米=韓国)ポール・ダノの隠れファンとしては案外まともな役で嬉しいような寂しいような。英米の主役級二人はちょっとよそでは見れない怪演で楽しんでやってるのが伝わってくる。BJ作品としては微妙。どうも制作の全プロセスを掌中に収めてないような。グエムルみたいにもっと暴れ回る怪物が見たかった。娘/オクジャパートはトトロに遠く及ばない。国境越えが一番難しいのはやはりユーモアか。英語になって確実に何かが失われている 7/10[投票(1)]
★4マドモアゼル(1966/英=仏)まだ伊太利移民が反外国人感情の標的になっていた頃。それが葡萄牙人だったこともあるし、ここ2、3世代はアラブ人、今は中国人もやり玉に上がる。ハネケ好きが好きそうな超後味の悪い話だが、デュラスの息がかかると、にわかに濃密な官能性が匂い立ち、垢抜けない野人に希・羅的な神々しさが宿る。これが昭和ニッポンだったら団地妻の売春程度なのが、マックス・ジレも顔負けの愉快犯に高じるところにサドを育んだ風土を偲ばせる[投票]
★3おとし穴(1948/米)むしろ暴力団の用心棒役が似合いそうな巨体探偵が、調査対象の女に惚れ込み、ストーカーを働くだけでなく、後に恋敵となる雇用主にも牙を剥いて一騒動起こす。このあまり類を見ない感じの異常人格キャラの導入は魅力的だが、一人の女を巡る男達の葛藤がどうも生煮えで、お座なりの痴情事件で強引に話をつける感じ。女は女で、妖婦としての自覚が弱く、日和見に終始している。総じて印象が散漫で、強力な感情の波を引き起こさない[投票]
★4さらば荒野(1971/英)今世紀の対テロ戦争を予告するような、圧倒的火力差による非対称戦の息詰まる攻防。<無法者>は反撃のチャンスも与えられずピンポイントで狙い撃ちされる。何とか辿り着いた水飲み場が瞬く間に血の池地獄に一変。町の名士によるposseが、快楽殺人の嗜好を隠そうともしない男のための人間狩りの機会に堕するまでの展開が白眉。逆に、後半は、寝取られた亭主による<捜索者>/恋人達の逃避行の二番煎じに簡単に収まってしまう。7/10[投票]
★5窓(1949/米)聞きしに勝る児童ホラー?の珠玉の小品(世間ではノワールに分類されるらしいですが)。確かに年端もいかない子供が狡猾な殺人犯に一人で立ち向かわなければならないシェーマは、『狩人の夜』に通じるものがある。が、追うものと追われるものの目くるめくローラーコースター感は、こちらのほうが頭ひとつ分抜きん出ていると思った。 [review][投票]
★4太陽の爪あと(1966/英)これはむしろ夢野久作や香山滋の世界に通じる、なかなかしんみりとした余情を残す異人悲哀談。肝心の<不気味なもの>の登場まで、ゆうに1時間以上待たされるが、都会の新婚さんが荒っぽい下賤の男達の無知と不埒の洗礼を受ける前振りの部分が滅法面白い。C・ドヌーヴとJ・フォスターの良い処取りしたような清楚系のヒロインの妖精のような俤が、口外無用の奇禍に見舞われた一族の末裔という命運をえらく神々しいものに見せる[投票]
★3ヨーロッパのある首都警察の秘密の書庫からの掘出物(1972/伊=スペイン)悪魔のいけにえ』の殺人狂家族の代わりに悪魔教会の設定で行ってみようという企画の大枠自体悪くないのだが、例によって人の動かし方が雑で、展開的にサスペンス志向が希薄なので今一盛り上がらない。瀉血したイヴァンカといった芳顔のヒロインは終始ぼうっとしてて撮影中薬でもやってたんじゃないかと勘ぐってしまう。時折思い出したように乱入してくる外連味たっぷりの幻想/幻覚シーンぐらいしか見所がないのがつらい。[投票]
★3二重の顔(1969/伊=独)素材的にはヒッチコックとシャブロルの間の非嫡出子のような遺産相続絡みのドメスティック・スリラー。脚本が多くの人の間をたらい回しにされて何度も書き直されたためか、どうも方向性が絞れてなくてテンポが悪い。いかにも同時代的なサイケ音楽は調子外れでイライラ来るし、中盤のナイトクラブのトリップシーンは無駄に長くげんなりさせられる。ラストの伏線の回収の仕方も段取りができていないので感情的についていけない[投票]
★4ヒッチコック博士の恐ろしい秘密(1962/伊)まだまだイタロ・ゴシックには隠れた名作があった!そんなにバタバタと人が死ぬわけでもないので若干中弛みするが、終盤にかけて一気に盛り返す。窓枠やカーテン、隠し階段や地下道を使った視線の誘導のサスペンス、カラーなのにモノクロのように強い光と闇のコントラストから生まれる目眩まし/死角の脅威、どこがどう通じているのか途中でわからなくなる屋敷の迷宮然とした内部構造も袋の鼠になった新妻の恐慌を弥増しに煽る[投票]
★4ラブ・ウィッチ(2016/米)奥さまは魔女』の能天気にジャーロの淫靡がカクテルされた懐古趣味が炸裂。ファッション撮影並みに配色から小物まで細心の注意が払われておりヴィクトリアン・ゴシック好きにはたまらなそう。だけど、お粗末なフレーミングのせいでせっかくの造形の魅力が半減 [review][投票]
★4アイズ・オブ・マイ・マザー(2016/米)ワイエス的な引きの画面の森閑とした奥行が、エド・ゲインの女性版の物語に、大人のための残酷な童話のような奇妙に歪んだパースペクティブを付与すことになった。 [review][投票]