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袋のうさぎさんのコメント: 点数順

★4ソングス・マイ・ブラザーズ・トート・ミー(原題)(2015/米)王家衛を崇拝する北京出身のアラサー女性が、全幅の信頼を寄せるSOを撮影監督に据えて、地球の反対側で先住民の少年少女を巡る愛と紐帯の賛歌を撮るとどうなるか。エキゾチックな装いと裏腹にこれは二重の意味で破格な映画だ。まるで儒教圏の純愛ドラマのようにしんしんと染み渡る情感の上澄み。風景と人のロングショット、若い男女の睦み合いや沈想に寄り添うアップ(そしてその階調を奏でるオリジナルの弦楽曲)がずば抜けて良い[投票]
★4狂気の愛(2014/独=オーストリア=ルクセンブルク)これが新世紀フェミニスト映画のひとつの到達点!?(呆然) 神経症的な黒い笑いを惹起する男性中心主義的歴史観の揶揄の毒々しさは只事ではない。個人的にツボにはまり過ぎて腹がよじれるほど笑い通しだった。閉塞状況に活路を開くのにむしろ北方のユ−モア(カウリスマキ?)に目を向けたのが吉と出たか。大作家の神話の嘘を暴こうとする目線の仮借なさは、独善的なロマンチズムに耽り勝ちな世の男性諸君にも向けられている?[投票]
★4ゼイ・ルック・ライク・ピープル(原題)(2015/米)超ローバジェットな侵略ホラーの新たな変種と思いきや、かなり真摯にメンヘラの問題系に取り組んでいて驚いた。 [review][投票]
★4ウェスタン(2017/独=オーストリア=ブルガリア)ピリン・マケドニア(ブルガリア南西部)というドイツ人からすれば歴史的な東方植民の延長線上が舞台なのに、ウェスタンという逆説的なタイトルをつけているのが面白い。カウボーイもインディアンもドンパチも出てこないが、女から見たフロンティアの汗と孤独と友愛と暴力ということで、異文化の衝突と行き違いのドラマが幼稚園の砂場の延長のように繰り広げられる [review][投票]
★4パラノイアック(1963/英)さすがJ・テイ原作。競合する複数の局面が縫い込まれたプロットの入れ子構造、ゴシックの雰囲気濃厚な曰くありげな舞台(隠し部屋のある舘と天を摩する断崖絶壁)、曲者揃いの役者陣(タイプキャストのオリバー・R)、今日の目から見ても新鮮さを失っていない驚愕の種明かし(技巧に走ったものとは異なり心理的に腑に落ちる)。後年ジャーロにも継承されるデカダンな怪奇趣味も健在なら、ミステリファンも納得のトリックの大盤振舞 [review][投票]
★4笑う窓の家(1976/伊)個人的にはジャーロの十指に数えたいぐらい好き。ニ度見すると、さすがに初体験の僥倖は薄まるが、全編に漂うおどろおどろしい雰囲気は瞠若ものだし、超自然を匂わせながら人間の狂気で話をつけるのも腑に落ちる。都会人2人が、頽落した僻地の僻事と迷信から理性の孤塁を守るような展開の閉塞感も心地良い。目を皿のようにする驚愕のラストは、『サマーキャンプ・インフェルノ』とカップリングして楽しみたくなる出色の出来栄え[投票]
★4ディシジョン・アット・サンダウン(1957/米)ランデブの場所で一堂に会するまで、関係者の素行品性と来歴を一筆書きで素描しながら、一気呵成に対立の核心へ雪崩れ込む冒頭15分の手際はサスペンスの鑑のような美しさ。フックとは斯様に周到かつ大胆に構築されるべきと感動する。常に胸に一物ありそうなスコットの無思慮と直情径行が予定調和の一歩手前で騒擾の種を蒔く(意表をつく)。独りよがりなお騒がせ者が不面目なトリックスターとして受容され、翻身を促すアイロニー [review][投票]
★4魔界からの招待状(1972/英=米)テラー博士の恐怖』と同じ趣向のアンソロジーだが、SF要素がなくなり特殊効果頼みでなくなった分、憎悪と怨恨が渦巻く葛藤のドラマと運命の不条理により大きな比重が置かれ、英国怪談の旗手として本領発揮な感じ。「クリスマスキャロル」の暗黒版風のものもあれば、脂が乗った頃の乙一が創案しそうなキンキーでシニスターな悪意の舞台装置も出てくる。いくつかの場面のセンセーショナルな戦慄(**)は未だに色褪せていない [review][投票]
★4戦火(1958/米)迎春閣の女将がまだおぼこ娘だった頃。元祖イエローフィーバーと見紛う異人種間ロマンス。こういう気恥ずかしいのは米国人同士は真顔でできない気もするが、文化と言葉の壁が恋の虜になった男女をなりふり構わなくするということで、成否は悉く両者の存在感にかかっている。二人の関係の進展の鍵となる場面はさすがに突き抜けている。ただ、リーホァの人となりに従順で窈窕なwaifu以上のものがあればと時代の制約を感じたりもした [review][投票]
★4ブキャナン・ライズ・アローン(1958/米)国境の町を牛耳る悪徳保安官とゴロツキ紛いの手下達。殺人を犯した男の身を簡単に金で売る町長。現金をもって外を出歩かないように警告する木賃宿の主人。些細な痴情の縺れがたちまち殺し合いへとエスカレートする西部人気質。パルプ小説が原作とはいえ、今日でも国境の南へ目を向ければ、売文家の創作と笑い飛ばせない現実がある。余りにも頻繁に目にするジャンルクリシェがどこまで史実を反映しているのか最近気になって仕方ない[投票]
★4今日(2012/仏)S・ジャクソン(「籤」)とチュツオーラが密林に篭って七昼夜まぐわり続けたら、こんな異形の姿をした嬰児が呱々の声をあげるのではと思わせる異様な祝祭の雰囲気。西欧化した2世が祖国へ戻ってきたときに覚える眩暈のようなもの。その圧倒的な光のざわめきと大地の脈動の交響が画面の隅々まで振幅させる。自らの象徴的な死を前にした男が思い出深い場所を憑かれたように逍遙する構成は「死者の書」に似た煉獄巡りの心象によるものだ [review][投票]
★4サファイア(1959/英)あまり日本で知られていない公民権運動時代の英国の黒人差別を下地にした社会派ミステリの秀作。刑事の私生活や職場関係でお茶を濁すことなく、捜査の筋道に焦点を絞ったメソディカルな構成と演出に好感。めったに私情を見せないベテラン捜査官の英国紳士然とした挙止と冷徹な眼差しが、ゲットー化したロンドンの裏町に蔓延する人種差別の業の深さを浮き彫りにする。劇伴音楽がない分、ダンスホールの乱舞シーンの高揚感が際立つ[投票]
★4赤の女王は七回殺す(1972/伊)相変わらず英米仕込みのミステリマニアには鼻で笑われそうな杜撰なプロット捌きと定番トリックの二番煎じ(ヘタリアの斉唱が聞こえてきそう)。とりあえず最後まで破綻せずに曲り形にも収束を見せるし、ジャーロの基準では割かし体裁が整っている部類に入ると思う。翻って、美女と古城、スプラッターとヌードショーなどの見所は、もはや職人芸の域に達しており、ファンサービスに手抜きはない。 [review][投票]
★4アモク(1972/伊)サドとマゾッホのみだらで自堕落なパロディのような設定と筋立ては、バーバラ・ブーシェの神がかり的な脚線美を愛でるための口実に過ぎないのだろう。。。すぐに発情する低脳な熊男の前で奥床しげに見せるパンチラは、シャロン・ストーンの恥毛なんぞ霞んでしまう神々しさ。シースルーのランジェリー姿も鳥肌がたつほど悩ましい。舘のダンディな御主人が、あの!F・グレンジャーと気づくまで少し時間がかかった 7/10[投票]
★4映画館の恋(2005/韓国)コルタサルの短編を想起させる。どこへ行っても同じ時計塔が見える深更の街路を盲滅法に駆けているうちに行き着いた家でようやく招き入れられたと思ったら客間で待たされている間に自分がすでに戦場で死んでしまっていることに気づかされる話。ただし、ここでは、ランドマークはTV塔で、煉獄を漂う魂は映写幕を介して(友人による再話の形で)十数年後に蘇生される。同じ不能感、同じ焦がれ、来るべき一切の事物を後ろに引き連れて[投票]
★4あなた自身とあなたのこと(2016/韓国)元ネタらしいブニュエル版にも遜色のない抜群の面白さ。蓮っ葉で、わがままで、飲んだくれで、嘘つきで、人が言うほど美人でもないのにすっかり女王様気取りの女がこれほど魅力的に感じられるとは!灯火に魅せられた虫のように、口さがない友人たちの噂に上る元カノの幻影の周りをなすすべもなく彷徨うしかない駄目男の俯き顔に自分の姿を重ね合わせる人もいるだろう。隣で寝ている相手が幽霊じゃないかと心配になる黎明時分[投票]
★4ストレイドッグス 家なき子供たち(2004/アフガニスタン=イラン=仏)絵に描いたような戦災孤児の話であるのに、あまり悲惨な感じがしないのは、素人子役の限界だけでなく、本筋と直接関係のない市井の記録映像の数々(演出されたものとは到底思えないその瞬間、その場所ならではの赤裸々な時代の断片*)が異様に肥大した存在感を誇っているからだろう。子供目線の児童映画としても、劇中で言及されるネオレアリズモより、ザジやモモ(エンデ)のアナーキーで遊び心に溢れた白昼夢の詩情を感じさせる** [review][投票]
★4灰と土(2004/アフガニスタン=仏)一度ならずシャー・ナーメが引用されることから、原作者兼監督が薫陶を受けた教育がペルシア文化圏のものであることを知る。120ページ弱の原作は、もっと巧みな作家であれば短編にまとめられるはずのもの。映像作品のほうがより食指が動くのは、選りすぐりのロケ地と撮影の力(**)によるものが大きいのだろう。本物の土着民のような鄙びた面構えのキャストも、その土地ならではの香りを届けてくれて見飽きるということがない。 [review][投票]
★4グッド・タイム(2017/米)NYの裏町をにっちもさっちもいかないまま彷徨する一昼夜の出来事を中心に据えているせいか『アフター・アワーズ』のなかなか醒めない夢の続きを見せられているような熱っぽさがあった。普段は何の接点もない赤の他人同士が思わぬ偶然から人生の岐路を共にしながら、結局何も分かち合うものがないまま袂を別つ末尾のアイロニーは、簡単な言葉では要約できない余韻を残す。 [review][投票]
★4さらば荒野(1971/英)今世紀の対テロ戦争を予告するような、圧倒的火力差による非対称戦の息詰まる攻防。<無法者>は反撃のチャンスも与えられずピンポイントで狙い撃ちされる。何とか辿り着いた水飲み場が瞬く間に血の池地獄に一変。町の名士によるposseが、快楽殺人の嗜好を隠そうともしない男のための人間狩りの機会に堕するまでの展開が白眉。逆に、後半は、寝取られた亭主による<捜索者>/恋人達の逃避行の二番煎じに簡単に収まってしまう。7/10[投票]