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[コメント] テレグラフ・ヒルの家(1951/米)

戦争難民によるアイデンティティ・スワップという一風変わったプレミスで始まるゴシックもの。陽光あふれるサンフランシスコの市街を一望する丘の屋敷の立地が画面から翳りを奪い、夜の帳の訪れさえ、馥郁たる潮の香に満ちた開放と冒険の契機に変えてしまう
濡れ鼠

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ステレオタイプな東欧訛り、冷淡なドイツ人官僚に人間味のある進駐軍の大尉という対比、アジア系の召使、イタリア移民の八百屋、チャイナタウンの夕べに出てくるタイの伝統衣装を纏った歌姫など、当時の西海岸の人種観を偲ばせる社会的側面が興味深い。

やはりゴシックでは風景も人格のひとつだというテーゼを確認できた映画だった。同じ西海岸でも、ごみごみとした街並みが常に背景にあると全然趣きが違う。いつ見ても上天気で、空気が澄み渡っているので、いったん邸宅の外へ出るとじくじくした情念的なものが霧散してしまう。雰囲気も何もあったものじゃない。

主軸となるパラノイアと譎謀のドラマは凡庸。情熱的な求愛者がのちに血も凍る殺人鬼に化ける流れが唐突過ぎて、演技が対応できていない。他人の子に血よりも濃い絆を感じる心理も掘り下げが足りないので、女性たちの自己犠牲的な行動に説得力が出てこない。脚本が多くの人の手を渡るうちに、当初の意趣が忘れられ、何をやりたいのかわからなくなってしまった感じがある。

(評価:★3)

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