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[コメント] 蠍の尻尾に関する殺人(1971/伊=スペイン)

消えた100万ドルの行方とか、フーダニットの興味とか、センセーショナルな殺人劇場のお膳立てをするための言い訳に過ぎないことがじきに明らかにされる。そこを割り切ってしまえば、謎解きのための性急な段取りや緩急の意識の低さ、撒き餌のぞんざいな扱いなど(わざとらしい前置きとこれ見よがしなズームイン)、サスペンス演出の手筈の不首尾は気にならなくなる(たぶん)。
濡れ鼠

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







飛び出しナイフを閃かす殺人鬼は、全身黒タイツをまとって自由に裏手の窓や正面扉から出入りし、サイレント時代の連続活劇と後年のスラッシャ−/B級アクションを架け渡しするようなシルエットで人目を引く。当然格闘技の心得があり、どんなアクロバティックな振付もそつなくこなす体操選手のような身軽さが強味だ。今日ではあまり見られなくなった一つの凶器に拘る素朴な造形が逆に新鮮に映る。致命傷だけでなく勝敗を左右する渾身の一撃にも必ずナイフが使われ、暗がりで玲瓏する白刃がえらく官能的に見える。もちろん、後に一世を風靡する米国製ブギ−マンに比べると、根源的な不気味さで負けるが、そのあたりはアプローチの工夫でカバ−している。超自然なところは何もない生身の人間としては、このくらい抑制が効いていてもいい。

ゴブリン風の薄気味悪い劇伴音楽や緑や赤などの極彩色を基調としたドキツイ照明は、同時代のアルジェントと比べると、やはり見劣りする。が全体的な印象の物足りなさは、むしろ決めのカットの絶対的不足によるものだろう。

パズラ−もどきの筋立ては、毎度ながら!論理的要請よりも、書割の興趣を優先しているので、ちぐはぐな感じは否めない。寝室は殺人の前戯に女優を脱がせる口実として安易に利用され、閉鎖中の劇場や古アパ−トなど黴臭そうな廃墟が決死のランデブの場所に好まれる。ラストの海中洞窟のくだりも、とってつけたような導入で強引に設定されるが(このへんのメリハリのない演出は早撮り感が見え見え)、それなりの見せ場をつくってくれるので、まあ、構成と編集の拙さには目を瞑ろう。しかし、魔法のように一瞬にして島に上陸する警官隊のカットには苦笑してしまった。。。

6.5/10

(評価:★3)

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