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[コメント] 垂直のまま(2016/仏)

畜糞が散見する村道沿いの藪が不自然に動くので覗いてみると、尻をむいた風来坊の男が年端もいかない少年の上にかぶさっている。独自の進化を遂げるブリトン衆道のベーコン風美学。異性愛の結実を示すのに出産シーンのドアップを無修正で放り出して見せる。
濡れ鼠

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







妻と別居した後に熊男の義父から言い寄られたり、寝たきり老人の釜を掘って逝かせたりするシーンは、身も蓋も無さ過ぎて、真顔で受け止めるのが難しい。

笑い飛ばすべきなのか、嫌悪に顔をしかめるべきなのか、それとも各々の美醜の観念を再度検討し直すことが求められているのか、リアクションに困る場面が何かと多い挑発的なトーンの映画である。

すべての親密な付き合いは、性器を媒体とせずには考えられず、ありとあらゆる卑猥で冒涜的な揶揄で他人を貶めることなしに、ガリア人の国のホワイトトラッシュ達は自己表現ができないように思える。

いずれ彼らも各様の性の問題に悩まされていることが闡明されるが、攻撃的な態度は社会に拠り所を持たない者の不安の裏返しということか。 同性愛の兆しなど微塵も見せない布袋腹の親父が、火成岩のようにごつごつした指先で娘婿の股間を触れるときに見せる気恥ずかしさは、自己実現する手筈を持たない者のフラストレーションの根深さを物語っている。

いつまでたっても仕事のできない脚本家は、狼が跋扈する牧草地帯を跋渉しながら、ますます錯綜の度合いを深める性意識の深層=性別どころか人畜の境界も曖昧な袋小路にはまってゆく。 山羊のかんばせを斜上から愛でるように映し出したかと思ったら、次の瞬間には主人公が彼の畜獣と胎児の格好で添い寝している姿を見せられるわけだ。

自分が最初に目を付けた村の美少年が元妻の恋人として再登場するあたりに、この映画のひとつの感情的な山場があるのだろう。 マリも新しい伴侶のヨアンも、どうやら同性愛の気はなさそうだし、あったとしても公衆の面前から隠蔽することに成功している。対するレオは、愈々そんな社会の偽善を前にして性的逸脱者の居場所のなさを痛感させられることになる。

ゲイの人が抱えている疎外感は伝わったが、性描写がいちいち極端なために(そのうちノーカットで獣姦のスペクタクルが始まるのではないと心配した・・・『湖の見知らぬ男』を撮るような監督ならやりかねない)ヘテロの私のほうが映画から疎外されてしまった感がある。

7.5/10

(評価:★4)

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