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[コメント] ゼイ・ルック・ライク・ピープル(原題)(2015/米)

超ローバジェットな侵略ホラーの新たな変種と思いきや、かなり真摯にメンヘラの問題系に取り組んでいて驚いた。
袋のうさぎ

電波妄想系SFホラーのギミックに色目を使いながらも、その虜になるのではなく、ヤングアダルトの等身大のエピソードを散りばめて、地域性に根付いたインディードラマならではの親密な感触を手懐けようとする。長年消息不明だった男の不透明な言動がじわじわと醸し出す不穏のムードは、二人の友情が心からのものなだけに、いっそう生々しく切実に映る。傍目には社会的に自立しているように見える旧友がひと知れず抱え込む妄想性障害の断絶が周囲に波及させる関係性の不安定さは常に最悪の事態を予期させる。幻覚と現実の連続性を自然に見せる時間処理と溜めの効いた切り返し、大切なひとに何が起こったのか末尾をぼかして想像に任せる話運びなど、間の持たせ方が巧い。ラスト10分間の緊迫感は凡百のスリラーを軽く凌駕する。ジャンル映画の様式性と奇の衒いのない青春ドラマ(というにはちょっと年を取り過ぎか)の素朴な感受性を見事に両立させた。

(評価:★4)

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