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袋のうさぎさんのコメント: 更新順

★4TAR/ター(2022/米)ChatGPTが自動生成したような、#MeTooの"リベラル"、あるいは、やんわりとanti-wokeなカリカチュア(デイヴ・ルービンとニコラス・クリスタキスの対談を思い出した)にはどうしても苦笑が漏れてくるが、アントン・シガーやレクター博士に比肩するブランシェットの怪演は、物陰に屈んで「斑点のついた黄色いナシを食べながら、崇拝」したくなるようないじらしさがある。おかげで翌朝の夢の中までリディア・ターの化身に苛まれた[投票]
★4ブルータル・ジャスティス(2018/米=カナダ)Stormfrontや8kunで気炎を吐くような保守反動の金気臭さ*は薬にもならないが、ネオナチご贔屓のブラックメタルよりもむしろ正統派へービーメタル寄りのズッシリとした挙措動作のリズムと赤剥けの暴力の恐ろしいほどの切れ味は、結構なトラウマもの。前2作のこじれたバロック趣味も悪くはないが、絶賛もしない人間にとって**、今回のtrollらしいシニシズムの計算づくのドライさは好感。悪意に満ちた不意打ちの演出も磨きがかかる [review][投票(2)]
★4パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021/米=英=ニュージーランド=カナダ=豪)このニューエイジのグルのような風采の監督とはこれまで御縁がなかったが、これは楽しめた。サザンゴシック仕立の面従腹背を雄大な西部の孤絶した山峡へ持ち込み、クリスティ的な目隠しの不穏さと燻製ニシン添えの捻りを加える。サバイバリストのメッカと評判のモンタナが舞台なのも政治的慧眼。キャラの使い分けに歯切れの悪い部分もあるが(特に後半の弟の空気感)、フィルのホモエロチックな色気は女流監督ならではの艶かしさ[投票]
★4オールド・ヘンリー(2021/米)それこそ作品全体の命運を決するような唯一無二の瞬間を、神々しく、最高峰に生きるために、物語の山谷・気分の浮沈・話運びの緩急が段取りされているような映画。 たとえそこでしたり顔に下される決断がどんなに陳腐で手垢にまみれていても、肝心な場所でとちらなければ、後々まで尾を引く強い感銘を与えることができるんだなあと。臆面もなくベタな展開なのに、久々に全身粟立った。7.5/10[投票(1)]
★1テッド・バンディ(2019/米)21歳と11か月まで童貞だった覗き魔でストーカーでオナニー中毒の元帰宅部員とモルモン教徒のおぼこ娘の出会いと別れを彼女視点で描くという出発点はいいが、自己を客観的に見れない人物の自画像を批判的に捉えられないなら、今更映画化する意味がどこにあるのだろう。このテッドのペルソナはディカプリオの廉価版にしか見えない。半世紀たってもメディアの創りだした虚像の呪縛に囚われている。これじゃ、犠牲者の遺族も報われない[投票]
★4ザ・ハント(2020/米)ポストトランプな『猟奇島』だからといって、誰が一笑に付すことができるだろう。序幕は真の主人公が確立されるまで、のべつ幕無しに視聴者の先入観の裏をかくことに重点を置いた構成。ジャンルファンなら無関心でいられない仕掛けが散りばめられてる。惜しむらくは、中盤以降、出涸らしのミームの寄せ集め以上にナラティブ的な深化が見られない。マナーハウスの果し合いに至っては、『キルビル』の劣化コピーに甘んじている 7/10[投票(2)]
★5ビリディアナ(1961/スペイン)縁故主義・情実人事が横行する、実質半径数人の領地に、エデンの園の住人みたいにして暮らしてる。門の外は煉獄しかない。何もかも同語反覆的で再帰的(親族結婚・寄生関係・収奪経済・旧世界の悪徳の再生産)。ヒロインが顔だけでなくそのドン・キホーテ的な言動まで信心屋の親友に酷似してるのを再発見して愕然。奇遇にも同じ<El sur>の0.001%だ。私も遺言状をしたためるドン・ハイメのような黒い笑いの発作の常習犯だった[投票(1)]
★3地下幻燈劇画 少女椿(1992/日)幻燈的な紙芝居を意識している割には、つなぎの絵が普通の深夜アニメの質に戻ってしまうのが残念。他人の画風を真似るだけでは超えられない壁を感じた。快調に始まったかに思えたエログロサーカスも、2話3話に入る前にネタを出し尽くして閑古鳥が鳴く有様[投票(1)]
★3ホール・イン・ザ・グラウンド(原題)(2019/アイルランド)舞台がブリテン島で、大森林があり、隕石のクレーター付近で超常現象的な怪事件が連続して起きるとなると、やはりマッケン的な異形幻想を期待してしまう。初動はなかなかギアが入らず眠気を誘うが、人ではないものの疑惑が芽生える中盤の見せ方に工夫があって少しの間目が冴える。ただ、大団円に近づくにつれ、旧作ヒットメドレー・リミックスのように見えてくるあたりが、この分野にとんと新風を吹き込めずにいる時代の限界か[投票(1)]
★4収穫期(2004/露)見果てぬ大草原の呪いとでも言いたくなるようなものが画面に息づいている。それは時として神の恩寵かと見紛う光の乱舞で人の目を欺きもするが、夜更けとともに悪魔の囁きとなって、眠れぬ母親を空の端が白み始める時間まで悩ましたりする。ロシアの辺境に蔓延る迷信や異端信仰には興味が尽きないものがあるが、理性の堡塁としての家族や共同体が、渺茫たる野蛮の咆哮の前では、風前の灯でしかないことを、本作は赤裸々に抉り出す[投票(1)]
★3トゥルース(原題)(2010/露)Gopnik at its finest?ロシア流『ガンモ』あるいは『ウィークエンド』?開幕早々の素敵な予感はあっさり裏切られるが、最後まで文化的な脈絡がよく呑み込めなかった。準主役級の存在感のあるカジモトの唐突な退場と共に別の映画になってしまった感もある。「二十日鼠と人間」的な展開でも期待していたのか?いずれにしろ、叔父との最初の絡み以降は小粒のイミフなキャラの乱立で迷走感が深まり、端的にいってちっとも面白くない[投票]
★5ジュデックス(1963/仏=伊)「或る夜の出来事」という措辞の持つの曰く言い難い響きが木霊する二度の出現#。深層のじじまの中から魔性のものが立ち上がる驚異の瞬間。寝静まった城に夜盗に入った黒タイツの女が復路の門前で狼の一群と遭遇するまで。道端で傾眠する探偵が憑き夜の石畳を戞然と鳴らす辻馬車の到来に驚かされて白タイツの女曲芸師と再会を果たし。目もあやな陰陽二人の対決、三角屋根上のキャットファイトほど、美学的に満足のいく結着はない [review][投票(2)]
★3ナイルヒルトン・インシデント(2017/スウェーデン=デンマーク=仏=独)北欧ノワールの影響は覆うべくもないが、亜語の会話とカサブランカの煤けた街並が、使い古された筋立てに南地中海の風情を添える。それがどの程度ムバーラク政権下の縁故主義と職権濫用の実態を反映しているのか知らない。贈収賄に塗れた汚職警察の活写はディストピア映画と見紛うどす黒さだ。素材の時事性、エジプト庶民の怨念が噴き出したような終幕への意気込みは買うが、概して場面設計と人物演出が普通の連ドラの域を出ない[投票]
★4ナイト・オブ・ザ・サンフラワーズ(2006/スペイン=仏=ポルトガル)いわゆるラストベルト的な過疎の地方で孤立無援な獲物ばかりを狙って跋扈する連続殺人犯の話は珍しくないが、この人を人とも思わぬ男の薄ら寒さとどん詰まりな状況の閉塞感は鬼気迫るものがある。ピレネーの集落の時間が止まったような佇まいも独特の情趣を棚引かせる。別々の視座から数度に渡って同じ事件の前後談が語り直される構成は、その都度新たな奥行を付け加えるだけでなく、次なる展開の予断を許さないように爪繰られる[投票(1)]
★5はかな(儚)き道(2016/独)まことに密やかな映画で、息を潜めてないと、せせらぎのように残響する時間がまるごと抜け落ちてしまいそうで。何に光をあてて何を暗中に残すか、一瞬一瞬の決断に対して(唐突な飛躍・大幅な省略がある一方でイコン画のような神妙な引き延ばしもある。つなぎも変則的で前後の脈絡を見失いそうになる)多くの疑問が生まれてはもやもやを残す*。視力を失いつつある父が世界の指標の有り様を説明する下りが主題のひとつを要約してそう [review][投票]
★4メクトゥー・マイ・ラブ カント・ウノ(原題)(2017/仏)セット*!ニース!学生と観光客と地元のすけこましが糸目もあらわに入り乱れる夏のバカンスの昼下がりと夜通しの馬鹿騒ぎの肉迫が生々し過ぎてとても冷静に見ていられない**。やはり、この人の映画は、褐色の肌に映える白い歯の微笑と南仏の抜けるような青がよく似合う。毎回、お約束のように意中の人をいけ好かない仲間に目の前で掠め取られる主人公が、昼過ぎまで悶々として寝床で過ごす下りは世界の映画青年に捧げられている? [review][投票]
★2心臓にナイフ(2018/仏=スイス=メキシコ)開巻からソフトゲイなジャーロといった感じの色彩感と淫猥さで、この組み合わせもなかなかイケると胸を弾ましたのも束の間。じきに園子温のようなアングラ演劇路線で暴走し始め、ついていけなくなる。多くの場面で、エロスと下品を取り違えているのがつらい。呼び物となるはずの殺戮サーカスは、どれもこれも通り一遍で驚きがない。カラックスのような若い才気の迸りが画面やキャラの爆発的な化学反応に見られるわけでもない[投票]
★4ソングス・マイ・ブラザーズ・トート・ミー(原題)(2015/米)王家衛を崇拝する北京出身のアラサー女性が、全幅の信頼を寄せるSOを撮影監督に据えて、地球の反対側で先住民の少年少女を巡る愛と紐帯の賛歌を撮るとどうなるか。エキゾチックな装いと裏腹にこれは二重の意味で破格な映画だ。まるで儒教圏の純愛ドラマのようにしんしんと染み渡る情感の上澄み。風景と人のロングショット、若い男女の睦み合いや沈想に寄り添うアップ(そしてその階調を奏でるオリジナルの弦楽曲)がずば抜けて良い[投票]
★4狂気の愛(2014/独=オーストリア=ルクセンブルク)これが新世紀フェミニスト映画のひとつの到達点!?(呆然) 神経症的な黒い笑いを惹起する男性中心主義的歴史観の揶揄の毒々しさは只事ではない。個人的にツボにはまり過ぎて腹がよじれるほど笑い通しだった。閉塞状況に活路を開くのにむしろ北方のユ−モア(カウリスマキ?)に目を向けたのが吉と出たか。大作家の神話の嘘を暴こうとする目線の仮借なさは、独善的なロマンチズムに耽り勝ちな世の男性諸君にも向けられている?[投票]
★3私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016/チェコ=ポーランド=仏=スロバキア)昨年のニースのテロ事件の後、手口が似ているというのでにわかに国際的な脚光を浴びた。若い女性の単独犯というのも珍しいが、性革命の時代にプラハのゲイシーンで活発だった経歴も異彩を放つ。その点、同様に(二度)映画化されたパパン姉妹のケースと比較してみるのも面白い。あちらは近親相姦、階級社会の搾取という違いがあるが。社会主義政権絡みでは、家族関係、教育事情、労使問題などの面で、チカチーロの事件が頭を過る[投票]