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[コメント] ノクターナル・アニマルズ(2016/米)

美と醜、強さと弱さ、男と女、、交錯に眩暈がし、心を揺さぶる。
カプリコーン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画を観てこれほど動揺を覚えたのは久方ぶり。

お洒落な映画だと思って観に行った自分に苦笑せざるをえない。 そして今回もトム・フォード好みの知的な配役に拍手。

冒頭シーンから、でたらめに太った女たちが全裸で揺らぎ、挑発するように私たちを見つめてくる。その横で、完璧な衣装でたたずむエイミー・アダムス。あんまり綺麗だと思ったことがなかったけれど、トム・フォードが彼女の知性をおもいきり引き出して、目が離せない。醜さと美しさが交錯し、同一化してゆき、早々と眩暈がしてくる。

始終この調子で、女性はこころして観た方がいいです。

現実の話に映像化された小説が差し込まれて映画は進むのですが、やはり、あの、悲劇のドライブ・シーン。なんということのない日常のはずが、突然ぽっかりと穴ぼこに落ちる恐怖。小説の話ということを忘れ、恐怖に共振して、また眩暈がしてくる。 なんというか、トム・フォードは容赦ない。一度穴ぼこに落ちたら、徹底的に落ちて、それは悲劇としかいいようがない。悪をなす者に怒りを感じても、ただの馬鹿だからタチは悪くても怒るに足る実態はなく、悪の陳腐さが示される。

それでこのシーンであまりに動揺して、後半はエイミー・アダムスと一緒になってぼーっとしかけたけれど、 「REVENGE」 のアート作品によるトム・フォードの「そう、これ、復讐の物語ですよ」のでかいことばに肩をたたかれてすこし意識が回復。

この復讐の物語は多層化している。強い人間と弱い人間、一人の人間のなかにある強さと弱さ、女の強弱と男の強弱、それらが交錯し、行き場が見つからないまま、観る者の心に波紋が広がる。 ノクターナル・アニマルズ、「夜の獣」、、暗闇のなかで活発にうごめく生きものたち。誰のなかにもある衝動を垣間見せ、ひとしきりの動揺をあたえる映画。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] ぽんしゅう[*] 浅草12階の幽霊

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