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[コメント] EAST MEETS WEST(1995/日)

岡本喜八の夢と現実。大人になったいま再鑑賞したら面白かった。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は岡本喜八や市川崑や鈴木清順が大好きなんですが、悲しいかな、私が映画館に足繁く通うようになった大学生の頃、彼らは既に「晩年」に差し掛かっていました。もう、なかなか撮らせてもらえないしね。やっと撮らせてもらえた貴重な新作も老いや衰えを感じる残念な作品だったりしたわけです。

この映画もそうした一作でした。いや、今回、公開時以来二十数年ぶりに再鑑賞するまでそう思っていました。

今回改めて観て楽しかった理由は2つ。私が大人になったこと。西部劇の何たるかが分かるようになったし、役者をゲラゲラ笑って観られました。もう一つは当時の岡本喜八の事情が分かったこと。

冒頭の歴史的事実(背景)説明のテンポの良さ。勝海舟役の仲代達矢のとぼけた演技。岸部一徳がジョン万次郎だってよ。そういう「喜八節」だけでも面白い。しかも設定がとてもしっかりしている。史実とフィクションを巧みに組み合わせる面白さ。その上で、西部劇のフォーマットにきちんと則っている。70歳過ぎてこれだけのオリジナル脚本を書ける体力・気力はすごい。

これ、製作総指揮・奥山和由なんですよね。そのおかげで、憧れの西部劇を本場で撮ることができた。でも、金も出すけど口も出したんだろうな。岡本喜八にとって思い通りにいかなかった面もあったのでしょう。実際、後に16分短いディレクターズ・カット版を作っていますしね。正直この映画、中盤結構タルいんですよ。(私はディレクターズ・カット版は観ていないんですけど)

さらに言うと、この映画の撮影中、岡本喜八は言語障害を起こして硬膜下血腫と診断されたそうです。プロデューサーの口出しばかりでなく、自身の身体も思うようにならなかったんだろうな。ちょっと悲しくなってきた。

これは、岡本喜八にとって「夢」の企画だったはずです。だけど「現実」はいろいろ思い通りにはならなかった。「夢の企画」は決して「夢の映画」にはならなかった。そんな印象が残る映画です。

(2022.11.18 CSにて再鑑賞)

(評価:★3)

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