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[コメント] キル・ビル Vol.2(2004/米)

マニア映画の中でもさらに上級者編。映画は消耗品じゃない!
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







vol.1の★3より高い評点を付けたが、これは作品自体の優劣よりも、私自身の受け止め方の違いによる所が大きい。

「タランティーノ節」なるものがあるものとまだ信じていた前作ではプロ級に巧いコピーバンドと揶揄したが(そのくせサントラは買ってしまったのだが)、「そんなものは存在しない」ことを受け入れた上で観た今回は逆に面白かった。時間軸をずらしたりマシンガントークだったりと世間の言う「タランティーノ節」なんて見かけ上のものを突き抜けた先に、「作り物の面白さ」を追求するタランティーノの真の作家性が見えたのだ。その面白さについてはkiona氏が熱く語っているので詳細は割愛する。

その「作り物の面白さ」を支えているのがロバート・リチャードソンの撮影であることはジョー・チップさんの秀逸なレビューに書かれている通りなのでこれまた割愛するが、わざとピンボケするに至っては、ストーリーのみで面白さの優劣を判断する観客に対する高らかな「作り物」宣言であり、正にジャン・リュック“ヌーヴェルバーグ”ゴダールの「間違った編集」の域に達しているのである。 もっともタランティーノ自身は、この映画の登場人物の軌跡からも分かる通り、ヨーロッパはおろかニューヨークの映画にすら興味は無いようだが。

また、こちらが熟知している日本映画へのオマージュを捧げた前作では、「???」となる部分も多かったが(それで笑えたのだが)、今回の狙った先(特にカンフー修行シーンなど)は、私の持ち合わせる知識とタランティーノが抽出したエッセンスが見事に合致した。なんだ、これはけにろん師匠が書いてることと同じだ。 クッソー、こんなに書きたい内容を先に書かれた映画も珍しい。

と、ここまで他のコメンテーター(それもディープな人達)を引き合いに出しながらレビューを書いてて気付いたのだが、パロディーなどによくある「誰もが知ってるあの場面」なんかはタランティーノの興味の対象ではなく、「俺の知ってるあの場面」のみに力が注がれているのだ。 この映画による真の対決は、タランティーノのマニアっぷりと観客のマニアっぷりのような気がしてきた。 「マニアのマニアによるマニアのための映画」(それも上級者編)。

しかし、一攫千金を狙う山師の如き日本の配給会社(GAGAだったか?)は、そんなことはお構いなしに一般市民にあたかも普通の「ハリウッド系娯楽大作」かの様な大宣伝を行う。 勝手に「ラブ・ストーリー」なんて副題を付けたり(たしかにそうかもしれないけど)、vol.1の時は「タランティーノの名前はマニアにしか受けない」という理由で極力監督名を出さず、かつ、『トゥーム・レイダー2』と並べて宣伝に乗るように努めてあたかも同列の女性アクション映画の如き印象を植えつけようとした。

いや確かに映画は商売なんだけどさ。

ただ、こうした配給会社大宣伝映画は、往々にして「消耗品」であることが多い。 どんどん早まるDVD化(特典映像付き)、すぐに廉価版出して売れなくなったら廃盤、といった流れからも分かる通り、一時期のブームで荒稼ぎできればいいという商売根性が見え見え。 観終わった後に何も残らないタランティーノ映画ならなおさら「消耗品」なのだろう。 私は、「映画は芸術とイコールでもなければエンターテインメントとイコールでもない」といった旨を何かのレビューに書き、それが合っているか間違っているかは未だに分からないのだが、この映画で一つだけ確実に分かったことがある。

「映画は消耗品じゃない」

70年代映画への熱い想いをぶつけたタランティーノがそれを証明してるじゃないか。

(評価:★4)

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