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[コメント] ミスター・ロンリー(2007/英=仏=アイルランド=米)

文学的で哲学的でクレイジー
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恥ずかしながらハーモニー・コリン作品初鑑賞。 マイケル・ジャクソンのマネしてる奴がマリリン・モンローとして生きる女に出会うというイカレタ設定にワクワクしたので映画館へ。

結論を言えば、たまたま面白かった。 もし私が「娯楽脳」の状態で娯楽作や感動作を求めていたら、「なんだこれ?」って言ってたかもしれません。 たまたま「文学脳」特に村上春樹脳になっていたせいで「腑に落ちた」のでしょう。妙に納得した映画でした。

「かりものの人生の、ほんものの幸せ。」 たしかそんなキャッチコピーだったかと思います。あながち間違いじゃありませんが、そこから想像する印象とは全然違う話です。 確かにこの映画は“人生”を描いていますが、登場人物の人生を切り取っているというよりも、監督が思考する哲学的な“人生”に登場人物達が配置されている印象を受けます。

おそらく、多種多様な解釈が可能な映画でしょう。 例えば私が解釈するなら、こんなことを言ってみたりします。

冒頭の独白でもありますが、「有名人のマネ」は有名人の「いい所だけ」マネているだけです。その人生を丸ごと借りているわけではありません。単に“上澄み”をすくい取っているにすぎません。 要するにこの映画の登場人物達は、まだ“人生”そのものに向き合っていないのです。 そんな彼らのファンタジーな生活空間に、妙に現実的な羊のエピソードがぶち込まれます。 彼らにも、シスター達の“奇跡”という名のファンタジーにも、これ以上無い現実的な結末が訪れます。 そして、その他様々なエピソードを交えながら、監督は主人公に言わせるのです。 「普通って何だろう?」

「人生(を彷徨っている時間)に比べたら、死はあっと言う間に訪れる。」 劇中の独白にありますが、この映画の私の解釈はこれです。 仮に「ほんものの幸せ」というキャッチコピーを鵜呑みにするなら、人生に向き合って彷徨うことが「ほんものの幸せ」ということなのでしょうか?たぶん、違うでしょう。 むしろ「生きるって何だろう?」という方が近い気がします。

こんな風に、つい物語の解釈ばかりに触れてしまいがちな映画ですが、全体的に独白が多いにも関わらず、シスターのエピソードの結末をナレーションやニュース等に頼らず映像で見せた力量には感服しました。 その哲学的思想と合わせ、なんだか村上春樹的で私は好きです。 たぶん、たまたまですけど。

余談

シネスケ(2007/米=仏)ってなってるけど、英=仏が正解だよ。

(評価:★4)

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