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[コメント] ゼラチンシルバーLOVE(2008/日)

操上和美が監督であることには2つのポイントがある。1つは写真家であること。もう1つは70歳過ぎの爺さんであること。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







劇中、どんな写真を撮るのか問われ「自分が美しいと思ったものを写す」と答える台詞があります。 ストーリー上重要な伏線であると同時に、写真家・操上和美のポリシー、「そこに山があるからだ」宣言でもあるように思えるのです。 この純粋な芸術家精神は、一流アーティストだから言えることですし、老成とも見て取れます。 実際この映画は、写真家らしい美しい構図満載で、あるいは写真では表現しきれない動画の美しさ(例えば流砂や日の出)をフィルムに写したかったのかもしれません。 ただ、写真的に美しい構図が映画的に面白いシーンかと言うと、それは別の話。 この映画に、映画的情景は無いに等しい。

ストーリーは典型的な「なんだろう?」型。 観客が身を乗りだしてストーリーにのめり込むのは「どうなるんだろう?」なんですね。 「なんだろう?」で引っ張る展開は、作り手は楽なんだけど、余程のことがない限り観客の興味を維持しつづけられない。 約20年前の私の大学生時代に観た数々の自主製作映画は、見事に「謎の女」が頻繁に出てくるんですよ。 「謎の女」で興味を維持しようとする話は、20年前の自主製作レベルの話の作り方。

要するにこの映画、発想が古いんですよ。70歳過ぎの爺さんの発想なんですよ(年齢の割に若い発想ではあるけど)。 だいたいさあ、宮沢りえに永瀬正敏ってキャスティングが10年は古いよね。老人の考える「今時の若者」。 今なら、そうさなあ、真木よう子とか。男は誰でもいいけど、イイ男過ぎると「今の時代」感が出ないよね。この話ならもっと草食系男子がいい。

いや、話(意図)は分からんではないのです。 砂漠の虫のエピソードとオーバーラップする男の結末。 女は“仕事”をする前に卵を喰らい、男はその“仕事”前の女の顔に惚れる。一方女は“仕事”の後の顔に惹かれる(必ず振り返って顔を見る)。これはエッチをする前に盛り上がる男と、事後に親密さを増す女性の違いかもしれない、なんてことも想起させる。 分からんではない。 分からんではないんだけど、「なんだろう?なんだろう?」で引っ張った結果が「美味しい半熟卵の作り方」を教えられました、っていうのもなあ。 オムニバス映画の短編の1エピソードならよかったかもしれない。

陽水、林檎、ちょっとだけ清順的描写と、好きな要素はあるんだけどねえ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ina[*] 青山実花[*]

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