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[コメント] しんぼる(2009/日)

松本人志は天才だが、この手の話なら小林賢太郎の方が一日の長がある。こんなものはラーメンズがとっくの昔に通過している。仮にこれを実験的な映画と呼ぶのなら、そんなものは寺山修司がとっくの昔に通過している。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初から映画的な面白さは期待していないし、松本自身もそんなことを狙っていないことは分かっていた。 映像コントを見るような気分で、ラーメンズのDVDを見る感覚で気楽に映画館に足を運んだ。

そしたら、予想した以上にラーメンズ的だった。 だとしたら、あまりにもレベルが違いすぎる。一日の長どころか雲泥の差。 約2時間のステージで7つ8つ前後のコントを重ね、それが少しずつ結びつき、最後にアッと驚く世界観を構築する小林賢太郎の練りに練った構成力に比べ、1アイディアで押し切ろうとする本作。 たった一言で状況をひっくり返してしまう小林賢太郎の創造力(想像力)に比べ、ダラダラと分かりきったテンドンを繰り返す本作。いやまあ、わざとやってるんだろうけど。

もう長いこと松本人志は“瞬発力”で仕事をしすぎた。 おそらく、本人が思っている以上に“練りこんだネタ”が下手になっている。 私は『大日本人』で「言いたいこともやりたいこともよく分かる。ただ、ちょっとその表現方法が下手なのだ。」と書いたが、本作も基本的には同じだと思う。 基本的には同じなのだが、哀しいかな、松本人志本人が思っている以上に表現がヘタクソなのだ。

その原因として推測するに、必要以上に“映像”を意識し過ぎてしまっているのではないだろうか。

実際本作で描かれるコントやテーマは“映像”で表現されていると思う。 “言葉”による笑いをメインとした『大日本人』は松本人志の土俵とも言えたが、本作では不得手とも思える古典的なパントマイムみたいな演技を続ける。 そしてそれが裏目に出ている。 “映像”の使い方は決して巧くない。 間が悪い。テンポが悪い。言葉を抑えることを意識しすぎるあまり、映像が説明的過ぎる。

天才・松本人志が、前作と全く違う方向、一般的な映画とは違う方向を目指したのはよく分かる。 松本人志らしい“土俵”と違う局面にチャレンジしたであろうこともよく分かる。 だが、それは本当に必要だったのだろうか? 荒れ玉本格剛腕投手が、コーナーをついた変化球を投げようとしているようにしか思えん。 一度、直球勝負してみたらどうだ?

(09.09.20 渋谷HUMAXシネマにて鑑賞)

(評価:★1)

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