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[コメント] 告白(2010/日)

ガッ!とつかんでワーッ!と持っていく映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、騒いでいたクラスが女教師の告白で徐々に静まり返り、息を飲んでその告白に耳を傾ける。観客は、その生徒達と一緒になって息を飲んで話の続きに身を乗り出す。 この段階で観客を映画の中にガッ!とつかんでしまう。 そのまま最後まで観客の気持ちをワーッと一気に持っていくのだが、そのリズムが絶妙で、飽きさせないし疲れさせない。 最近のトニー・スコットに見せてやりたい。

中島哲也の特徴の一つに、適材適所のキャスティングでキャラクターを記号化するという手法がある。 それはもちろん、子役をはじめとする役者達が、監督のイメージを具体化するための“鬼の演出”に応えているということもある。 中でも木村佳乃が白眉。この木村佳乃はいいわぁ。 また、岡田将生は熱血教師には不似合いに思えるのだが、終わってみれば「不似合いに見えることを狙っている」ことに気付かされる。実に絶妙なキャスティング。たしかに、脳天気な熱血野郎にウェルテルなんてあだ名は付けないからね。

この映画、暗い方に振り切ったハイコントラスト映画なんだと思う。 彼の好む「不安な空」も合わせ、中島哲也らしい“解釈”。

初期作品(『夏時間の大人たち』『Beautiful Sunday』)は基本的にユルい作風だった。 そこから6年のブランク後、長編3作目『下妻物語』で目の覚めるようなハイテンション、ハイコントラスト・ムービーで復活した。だが、まだ話そのものは比較的ユルいものだった。 続く『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』と、話(テーマ)自体が次第にクッキリした輪郭を帯びてくる。 この映画は、その延長線上にある(そして『パコ〜』と対局に振れた)作品なんだと思う。

しかし、元はユルい「曖昧さ」を好む人である。 そして「過去の自分が嫌い」というモチーフを好む人である。 明確な自己正当化が主題であるとは思えない。 「な〜んてね」という台詞は、その告白が100%真実ではない「曖昧さ」を、後味の悪さと共に観客に提示したものではないだろうか。

(10.06.13 ユナイテッドシネマとしまえんにて鑑賞)

(2018.12.6 CSで再鑑賞して追記)

再鑑賞して改めて気が付いた(というか忘れていた)。 子を殺された母親が、犯人に自身の母親を殺させるまでの「母子物語」だったんだ。 言い換えれば、悪意の母子物語。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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