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[コメント] メランコリア(2011/デンマーク=スウェーデン=仏=独)

世界三大珍味監督の一人、絶望好きのラース・フォン・トリアーが描く「揺らぎから絶対」。人にはオススメできないが、俺はめっちゃ楽しかった。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は、キム・ギドクペドロ・アルモドバルラース・フォン・トリアーの三人を「観ていて嫌になる話ばっかなんだけど何だか気になる映画監督」と呼んでいたのですが、これを一言で「珍味監督」と命名しました。要するに、くさやとか鮒ずしみたいなもんなんだよねえ。

ブサイクMJことキルスティン・ダンストが、月光浴ならぬメランコリア光浴するでしょ、おっぱいバーンと出して。風呂にも入れない、言い換えれば地球の水を浴びることもできない彼女が、メランコリアの光を全身で浴びるんですよ、意外な巨乳をさらけ出して(<しつこい)。 説明にも何にもなってないけど、もうこれを見た時「私には解る」と言う彼女のことが解った気がしたんです。 「ああ、解っちゃったんだ。解っちゃったんだねえ」と。 何かもう「絶対的な何か」を悟ってしまったんだろうなあと。

思えば、彼女は結婚式へ向かう車の立ち往生からずっと「何かに縛られて動けない」状態にある。カメラ同様、精神的に「揺れている」状態なのだ。彼女を縛っているのは世俗である。第1部は彼女がどれだけ世俗に縛られているかを描写し続ける。そして赤い星を見上げた時から、それを薄々自覚し始めるのだ。

やがて彼女は、夫も仕事も失い、文字通り裸になる。 男どもはその愚かさだけを残して周到に舞台から退けられ、シャルロット・ゲンズブールが女性(あるいは母親)として世俗を引きずった常人の反応を示す中、「絶対的な何か」(この映画では絶対的な絶望かもしれない)を悟った“裸の”キルスティン・ダンストだけが益々研ぎ澄まされていくのです。

シャーロット・ランプリング先生(そんな悪態つくなら来なきゃいいだろうに)はある種の預言者として機能し、「教会も結婚も信用しない」、言い換えれば、信心も(制度としての)人の絆も魂の救済にはならない、と宣言するのです。

そして、ここが私が非常に感動した所なのですが、研ぎ澄まされたキルスティンは、それがまるで自分に出来る唯一のことであるかのように、子供に救済の手を差し伸べるのです。 慰めや説得のような“言葉”ではなく、自ら体を動かし木を削らせ、一緒に「魔法のシェルター」を作るのです。彼女が少年に与えたのは、身の安全ではなく、心の平穏です。 なんと優しい映画だろう。

こういうのを観ると、世界を守るとか地球を救うといった話が、なんて傲慢なんだろうと思っちゃう。

(12.03.03 新宿武蔵野館にて鑑賞)

(評価:★4)

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