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[コメント] 許されざる者(2013/日)

この話、好きじゃない。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どういう経緯でリメイクすることになったのか分からない。 何か勘違いしたプロデューサーの持ち込み企画なのかもしれないし、監督の李相日がやりたかったのかもしれない。 前者ならば、この企画を考えた人には「『死刑台のエレベーター』のリメイクを知らんのか!」と叱責してやりたいが、後者ならば少し分かる気がする。

勝手な推測だが、李相日にとってこの作品は『悪人』の延長線なのではないだろうか。 両者とも、善と悪との境界は必ずしも一元的ではないというテーマに思える。 例えばこの映画なら、小澤征爾の息子=小澤征悦と三浦友和の息子=三浦貴大の二世二人が演じるキャラクターは、殺されねばならんほどの悪人か?(特に三浦の方)って話なのである。

実はオリジナル版にも似たような印象を持っている。 ジーン・ハックマンそんなに悪い奴か?と思いながら観た覚えがある。だからこの話、(それが狙いであることは承知しているのだが)スッキリしない。ハッキリ言って好きじゃない。

この映画をリメイクとして考えると、その完成度の高さは遜色ないのだが、やっぱりそこに背負っているものが違うように思う。 この話が好きではないと書いたが、それでも従来の勧善懲悪の西部劇の歴史を踏まえた上で許される物語であったし、それをクリント・イーストウッド自身が描いたことに意義があったと思う。 しかし残念ながら、日本版リメイクにはそうした背景はない。

リメイクということを抜きにして考えてみよう。 完成度は高い。役者の演技も撮影も申し分ない。非常に立派な映画だ。 だが、先に仮定した「善悪のあいまいな境界」というテーマであるとしたら、時代劇ではピンとこない。 これは現代劇であって初めて我々観客に訴えかけるものになるのではないだろうか。

もしこれが「男の生き様映画」ということなのであれば、もっと他に適した原作のチョイスがあったと思う。

(13.09.16 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★3)

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