[コメント] 野火(2015/日)
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人間の営みを描くものが文学だとしたら、「野火」はその極限。たしかそんなようなことを誰かが言っていたような気がする。高橋源一郎だったかな?
これは、極限状態における“人間の営み”の映画だと思います。
私は「反戦映画に言葉は不要」と思っています。「戦争よくない」なんてことを100万回言うよりも、悲惨な状況をキチンと描けばいい。そう思っています。 そういった意味では、私がかねがね観たいと思っていた理想的な反戦映画です。 偽善的でない真摯な映画。私はそこを評価したい。
肉体の破壊、精神の破壊を描いてきた塚本晋也。肉感的で当事者視点の映画を作り続けてきた彼が、この作品に至ったのは至極当然のように思えます。
ただこれ、だいぶ一本調子に見えるんですよ。 塚本映画はたいがい見てるんですが、一人称の話は一本調子なんですよねぇ。ずーっと走り続けてるような映画。 対比として自然を美しく描いているんですけどねぇ、悪い癖だ。
あと、これは原作が原作だから仕方がないんだけど、狂っていく人間を描写しているわけじゃないんですよね。 「あ、こいつ狂ってる」ってのがオチであって、主人公は狂いそうになりながらも人間としての尊厳は守るのです。それじゃ面白く無いんだ。仮に冷静な人物でもいいけど、他人が狂っていく様をつぶさに見届ける語り部であってほしかった。
そういった意味では、キューブリックの『フルメタル・ジャケット』の前半の方が正しく狂った映画なんですよね(<正しく狂うってなんだよ)
(15.08.08 渋谷ユーロスペースにて鑑賞)
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