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[コメント] ハロルドが笑う その日まで(2014/ノルウェー)

ディスコミュニケーションに関する寓話。なんとなくいい話に見えるけど、入口、出口と過程の物語が合ってない。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







オープニング、主人公の人生を写真で綴ります。そして最後は「父親だから」と息子の元に戻ります。こう書くと“親子”あるいは“家庭”という物語で一見つながってるように思えますが、その間に描かれる物語が合ってないように思えるのです。犯行動機の描写としてはいい入りなんですけどね。

高級家具職人とIKEAという“高級品と大衆品”あるいは“伝統と革新”という対立構図は“共に爺さん”という共通項になってしまい、そこに投入される若い娘は物語的には対立構図の中で機能しない(彼女がいることで対立が深まったり、丸く収まったりするわけではない)。

そしてこの映画が描いている中核は、それらと関係なく、ディスコミュニケーションに見えるのです。

まず主人公の老人=ハロルドは、惚けてしまった奥さんとコミュニケーションがとれなくなります。息子も電話に出ません。この携帯はいずれ投げ捨ててしまいます。出会った若い娘は嘘ばかり言い本音を話しませんし、IKEA創業者はハロルドを誰かと勘違いしているし、最後まで相互理解は得られない。

この映画で数少ないコミュニケーションの成立は、ラストの父子の再会と、若い娘の母親の新体操のクダリくらい。結局親子物かいっ!という割には、IKEA創業者は息子と電話で話すものの(ここもコミュニケーションがとれていない)、親子関係の話には進展しない。

主要人物3人は、ただ場面を共有しているだけで、物語的に交わることはなく、かといって想定外の何かが起こるわけでもない。なんとなくホンワカしていて、なんとなくいい話“風”の「なんとなく映画」。

この映画の最大の成果として、数日後にIKEAに行ってまな板を買ったよ。IKEA無駄に広すぎ。買い方面倒くせえ。カンプラードを誘拐でもしないと気がすまない。

(16.08.11 ユジク阿佐ヶ谷にて鑑賞)

(評価:★3)

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