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[コメント] 独裁者と小さな孫(2014/グルジア=仏=英=独)

逃亡劇というよりロードムービー。冷徹な視線で、壮大かつ丁寧に作りこまれたガッツリ社会派映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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老人と子供という設定やそれを利用した邦題や宣伝、モフモフした感じの監督の名前で「心温まる感動作」だと思って観ると痛い目にあいます。『カンダハール』の監督です。直接描写を避けているのでなんとかPG12で済んでいますが、壮絶な映画です。

孫はなかなかのバカです。観てて腹が立つクソガキです。老人は決して反省の言葉を口にしません。結構なクソジジイです。そんなこともあって、私はすっかり“民衆”に感情移入して「こんなジジイとガキなんか早く殺されちまえ」と思いながら観ていたのですが(<それはそれで間違っている)、それも大きく裏切られます。 感情移入していた“民衆”が“愚民”に堕するのです。

つまりこの映画は、どっちの味方でもない。 “逃亡劇”の設定を借りながら実は“ロードムービー”で、追放された独裁者の視点で民衆や国情を描写します。それを監督は実に冷静に見つめていく。

「復讐は復讐を生む」「復讐の連鎖を断ち切るべき」というメッセージは今時ありがちですが、この映画のすごい所はそんなメッセージじゃないんです。 賢者が訴えるこれらの言葉が愚民どもにかき消されていく。 これがすごいというか恐ろしい。“冷徹な視点”と私が言う所以はここにあります。

寓話の形を借りたガッツリ社会派映画。

(15.12.13 新宿武蔵野館にて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)シーチキン[*] プロキオン14[*]

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