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[コメント] ビジランテ(2017/日)

入江悠の『アウトレイジ』的『サイタマノラッパー』。巧いんだけど、サジ加減が少しおかしくないか?
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







親子とか兄弟とか、そういうもっともらしいことを言ってはいるんだけれども、結局死んで解決するのって“逃げ”のような気がするんです。

入江悠の「地方都市(田舎)の閉塞感」描写って巧いんです。もっとも、田舎感というより「埼玉感」。なんなら埼玉の深谷感。 どうでもいい話だけど、埼玉の空って高架鉄道のイメージなんですよ、東北新幹線とか上越新幹線とか東武とか。そのくせ、栃木や群馬と違って山が見えない。関東平野だからね。地方(田舎)って、それぞれ空が違う。空が違えば空気感が違う。それを切り取れるか、画面から空気感が感じ取れるか、それが監督の手腕。そういった意味で入江悠は(少なくとも埼玉に関しては)腕のいい監督だと思う。

で、話を元に戻して、田舎の閉塞感って、「その町で生きる」ってことで、町を「去る」か「残る」か、「受け入れる」か「変革する」か、そういうのが主題になると思うのです。たしかに市議の次男はそうなんですけどね。 この長男=大森南朋は、いわば平和を壊す怪獣=ゴジラなんでね、そういう解決方法は“逃げ”のような気がしちゃうのです。なんかこう、自分の意志で前進(あるいは後退)しないと。

逆に、それはあくまで設定にすぎず、バイオレンスが主眼だったと仮定しましょう。例えば『アウトレイジ』とか。あるいは、一人の男の「死に様映画」だったとしましょう。例えば『ソナチネ』とか。 いずれも、ヤクザ世界というある意味ファンタジーなのです。 ところがこの映画は、田舎の閉塞感がリアル過ぎるんです。中国人問題とかさ(それも決着を逃げてるように思える)。観ていて、ただただ嫌な思いしか残らない。

どうも入江悠は巧いんだけど、サジ加減が巧くない。 例えば篠田麻里子のキャラとかね。あれは市議レベルの夫人じゃない。いずれ国政進出を目論んでる県議クラスの奥さんですよ。

(17.12.27 テアトル新宿にて鑑賞)

(評価:★3)

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