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[コメント] デトロイト(2017/米)

寓話を捨てたキャスリン“ガチ”ビグローが描くアメリカという「システム」。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は、キャスリン・ビグローの前2作『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』を「お仕事中毒な私!シリーズ」と呼んでいて、極限状態で「仕事(任務)ハイ」(もはや狂気に近い)になった人間の話だと解釈しています。 今回の作品もある意味極限状態ですが、「差別という狂気」に取りつかれた側の人間は敵役として配置されます。

はっきりと「差別主義者!(日本語訳では)」という台詞まであり(英語で何て言ったんだろう?)、政治的な意図がある映画だと思うんです。 キャスリン・ビグローは、50年前の実話を通して、今のアメリカで活発化している白人至上主義者(ドナルド・トランプも含めて)に対して物申したかったように思えるのです。 あんたらの正義って何なの?人権って知ってる?って。

アメリカという国の特殊事情と言ってしまえばそれまでですが、もう少し広い視点で考えると、元凶は「構造」というか「システム」にあると思うんですね。 警察官が(無駄に)権力を持っているというシステム。軍と州警察と市警が分離したシステム。司法が警察に甘いというシステム。自白は証拠にならないというシステム。 そしてこんなシステムもあります(誰が言ってどこで読んだものか忘れましたが)。

子供の頃に海水浴に連れていってもらった。ビーチには「白人専用」という看板が掲げられ、フェンスが立てられている。「どうしてフェンスがあるの?」「白人と黒人を分けるためよ」。そして黒人は車を盗むような人種だと教えられる。若干10歳にして立派な人種差別主義者だ。アメリカでは子供の時から人種差別主義者を養成する「システム」がある。

日本だって、かつて「士農商工穢多非人」「村八分」というシステムがあり、それが今日の「いじめ」につながる精神性の元凶とも考えられますけどね。ただ日本の場合は、差別より「派閥」文化なんだと思うんですよ。これの原因は「藩」とか「お家」というシステム。排除の論理という面では一緒かもしれませんけど。

よくできた映画ではあるんですが、気持ち良くはない。いや、手振れが多くて気持ち悪くなるということではなく、気持ちが暗くなる映画です。内容もそうですし、メッセージ色が強いのも重たい。正直楽しくない。映画として魅力を感じない。なもんだから、あまり点数は高くない。

(18.02.03 日比谷TOHOシネマズシャンテにて鑑賞)

(評価:★3)

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