コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ザ・ファブル(2019/日)

目玉焼きハンバーグ的な面白さ。おそらく制作側は意図していない『白痴』の物語。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







以前も書いたかもしれませんが、「かつてナイーブだった男の子がマッチョオヤジになる問題」というウチのヨメが嘆いている問題があって、その代表格が西島秀俊とこのV6岡田君なのです。岡田君ファンの知り合いの女子なんか「あのゴリラ」呼ばわりしてましたからね。昔のナイーブ男子は違ったんだけどな。尾美としのりとか宮川一朗太とか。そこかよ。 そういった意味では、向井君も福士蒼汰君もまだナイーブ側の顔なんだよなあ。ヤクザやイカれた殺し屋の面構えじゃない。なんでこのキャスティングなんだろう?

そうした点も含めて、豪華俳優陣が全然活かせてない気がします。 六角精児やモロ師岡は尺の関係でカットされたの?もしかするとスピンオフドラマ要員?何なの? いやぶっちゃけ佐藤二朗も光石研も活きてない。柳楽優弥もこんなもんじゃない。だって『ディストラクション・ベイビーズ』だよ。 特別出演的な佐藤浩市はともかく、この映画で唯一「葛藤」のあるいい役もらったのは安田顕くらい。井之脇海君なんか超もったいない。 これ、ジャニーズ映画でありがちなんだけど、他の役者は誰も得してない。

でも岡田君のことは悪く言いたくないのです。 だって、あおいタンが選んだ人だから。

V6ゴリラのジークンドー映画としては『図書館戦争』の次くらいに面白かったですよ。 しかしジークンドー岡田はやたら映画出すぎじゃね?何本出演しなきゃいけないみたいな契約でもあるんだろうか?マイルス・デイビスのマラソンセッションかよ。

というわけで面白かったことは面白かったのですが、お子様ランチ的とまでは言いませんが、ハンバーグに目玉焼きトッピングくらいの「男の子ってこんなの好きよね」程度の面白さだと思うのです。

そもそも、ワル&アクション&時々コメディという『ビー・バップ・ハイスクール』から進歩のない典型的「ザ・ヤンマガ」設定で、純情黒髪美少女(ちなみに茶髪は峰不二子風)を武骨なゴリラが助けるというベタな展開。 この山本美月に(『探偵はBARにいる3』の前田敦子くらいの)ほんの少し「したたかさ」があれば、話の成熟度が全然違ったのに。 要するにこの映画、役者の扱いもそうですけど、細かい味付けができていない。ハンバーグに目玉焼きが乗ってりゃ喜ぶんだろ?程度の腕の料理なんです。

だから「制作側は意図していない」と思うんですが、実はこれドストエフスキーの『白痴』と同じ物語だと思うのです。黒澤が「フィルムを切るなら縦に切れ」って言ったあれね。 つまり、純真無垢な心が人を救う王道物語なのです。

そう考えると『レオン』も同じだな。殺し屋に『白痴』話が多いのはなぜだろう? 「殺しの非情さと反比例する純真無垢な心」という文学的な理由だろうか? 「バカだから殺し屋なんかにさせられた」という現実的な理由だろうか?

(19.06.30 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。