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[コメント] ペイン・アンド・グローリー(2020/スペイン)

まさかアルモドバルに感動して涙する日が来るとは思わなんだ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どうやら作家というものは、自己と向き合い、悩み、自分を形成した過去に立ち返るものらしい。 新型コロナウイルス騒動でさらに加速したと言われるが、トランプ政権以降、世界で「分断」が進んでいる。他者を攻撃する者に最も欠けているのは「内省」だと私は思う。人はもっと内省した方がいい。

私は、この映画が自伝かフィクションかを問うつもりはない。 ただ、70歳になって老境の域に差し掛かったアルモドバルが、死を意識し、自らの人生と向き合おうとしていることは分かる。そういった意味では自伝的要素のある作品なのだろうし、フェリーニが脂の乗り切った40歳代で撮った『8 1/2』の映画監督の苦悩とは意味合いが違うと思う。

しかし一方で、話が綺麗にまとまりすぎている。 あまりにもいい話で、あまりにもいろんなピースがピタッとはまる綺麗な構成で、私は感動のあまり涙したくらいだ。こんなもんフィクションに決まっている。

主人公は常に「まどろみ」の中で過去の自分と向き合い、少年時代には熱射病の「まどろみ」の中で覚醒する。 そう考えるとこの映画自体が、映画監督が覚醒(再生)するまでの「まどろみ」期間を描いた物語なのかもしれない。

なんだかもう、珍味監督(私しか言っていないが)なんてのは遠い昔。今やすっかりスペインの巨匠呼ばわりされているペドロ・アルモドバル。この作品も「巨匠が肩の力を抜いて撮った佳作」的な雰囲気が漂っている。巨匠っぽい作品なんか今までもないのに。

(20.06.20 TOHOシネマズシャンテにて鑑賞)

(評価:★4)

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