コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] TITANE/チタン(2021/仏=ベルギー)

新手のフランケンシュタイン。母親不在の物語。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







イカレポンチ映画が観たくて映画館に行ったのですが、思っていた以上に嫌な映画だった。奇天烈というよりイカれた映画。ジェーン・カンピオンに続くカンヌ・パルム・ドール受賞二人目の女性監督ジュリア・デュクルノー。デヴィッド・クローネンバーグの影響を受けているそうですが、クローネンバーグ苦手なんだよねえ。それにボディ・ホラーは痛くて嫌だ。

私はこの映画を「母親不在の物語」と読み解きました。「母性否定」と言ってもいいかもしれません。この映画の主人公が関わるのが、常に「父親」なんですね。実の父親と偽の(成りすまし先の)父親が出てきますが、両方ともに登場する「母親」は非常に出番が少ない。少ないばかりでなく、物語上の「母親」としての役割すら担っていない。いや、この主人公そのものが「母性」を否定します。男に成りすますばかりではありません。乳房や妊婦としてのお腹を締め付けるのは、女性「性」封印の象徴です。最後は薄っすらと髭さえ生え、生まれた子供をその手に抱くこともしない。

自動車は「男」の象徴。車の横で踊るショーガールなんて典型例。実は消防車も同様です。マッチョな消防士たちの「男根祭」の神輿です。そんな男の神様の上で、ショーガールが下品なセクシーダンスをするなんて、マッチョ野郎は幻滅です。耐え難い屈辱と言ってもいい。そしてこのシーンは、女を「性」の対象でしか見ない男どもに対して、女の「本能」が勝る瞬間でもあり、敗れる瞬間でもあるのです。

そう考えると、私が「ゴリゴリのフェミニスト映画を撮る人」と評しているジェーン・カンピオンに続く二人目の女性パルム・ドール監督というのも、「さもありなん」と思います。

あと、これ、新手の『フランケンシュタイン』だと思うんですよ。ある意味、正統派「怪物の悲哀物」。

(2022.04.16 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。