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[コメント] 終電車(1981/仏)

大人のハチクロ。大人の恋はムツカシイ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







20年ぶりくらいの再鑑賞かなあ。年くってスクリーンで観たらやたら面白かった。なんだろうね、俺もフランス人に一歩近づいたのかね?(<どういうことだ?)

トリュフォー晩年の一作で、とは言え若くして亡くなったからまだ50歳前後の作品で、フランス人なら色恋沙汰バリバリ現役世代だったわけですよ。相変わらず脚フェチだしね。

今にして思えば、この3年前の『逃げ去る恋』で、『大人は判ってくれない』から始まるアントワーヌ・ドワネル物(=トリュフォーの強い自己投影)に終止符を打ち、新たな道を歩み始めた一作と見ることができる。

逃げ去る恋』以降、80年代に入ってから亡くなるまでの3作品『終電車』『隣の女』『日曜日が待ち遠しい!』は、トリュフォー慣れした目で見ると、個人的な映画から離れるのと同時に、“大人の余裕”が強まっている感じがするのです。 若い頃にやってきたことと実はあんまり変わらないのですが、気負いとか迷いとかトンがってた“若さ”が削ぎ落とされて、ワインの様に熟成して再提示しているように思えるのです。

終電車』は、ある意味『アメリカの夜』の熟成した再提示なのかもしれません。

つい「恋愛映画」という先入観で観てしまうのですが、いやまあ実際恋愛映画なのですが、基本は舞台裏のドタバタ物なんですよ。 そのドタバタの中心が男女の色恋ってだけ。

これね、改めて観て気付いたんだけど、ドヌーブは最初に一目惚れしてんのね。 表情とカット割りだけで表現されてて判りにくいんだけど、一目惚れしてんですよ。熟成されすぎ。観客は判ってくれない。

で、「ドヌーブ惚れてる」という意識でその後のドタバタを見ると、もうね、一挙手一投足が面白くって仕方がない。 みんな片想いというハチクロ状態なわけですが、分かりやすく悶々としたり揺れ動いたりしない。「人が恋に堕ちる瞬間を初めて見た」とか言わない。だって大人だから。 これは、感情を殺してる様をウヒウヒ観る映画だったんですよ。 そして、抑圧された感情が爆発する瞬間を迎えるわけですが、そのポイントに的を絞ったのが続く『隣の女』なのかもしれません。

そうした色恋沙汰をドタバタやってのラストシーン。 二人の手を握りカーテンコールを迎えるカトリーヌ・ドヌーブ。 さすが。さすがドヌーブ。 舞台の観客と一緒に拍手を送りたかった。

(10.06.06 下高井戸シネマにて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)赤い戦車[*]

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