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[コメント] 恋文(1985/日)

倍賞美津子はいい女。燃えろいい女。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ショーケンの映画」という認識でいたのですが、「倍賞美津子の映画」でした。「女性映画」と言い換えてもいい。 いや、「女性のプライド映画」と呼ぶのが正しいかもしれません。 金子修介に『プライド』って映画がありますが、一条ゆかり的肉食女子の意地の張り合いではなく、『恋文』 で描かれるのは、倍賞美津子と高橋恵子二人の「内に秘めたオンナの矜持」とでも言いましょうか。 それがカッコいいし美しい。倍賞美津子はいい女。俺達のシンコ=高橋恵子様は関根恵子時代からいい女。なんで高橋伴明なんかと結婚したかな。そんなことはさておき、倍賞美津子のいい女っぷりが際立つ映画だと思います。燃えろいい女。世良公則とツイスト。言いたいだけ。

ショーケンはね、もういいんです。ショーケンだから。 どんな酷い仕打ちされても、その困ったような笑顔一つで、女なら許してしまう。オッサンの私だって「しょーがない人ねぇ」で済ませてしまう。 役作りウンヌン以前にそのキャラクターで成り立ってる話。

ただ私、クマシロ世代じゃないんです。 『青春の蹉跌』や『地獄』、『もどり川』なんかを観ては低評価を付けて、諸先輩方から「クマシロは一般映画じゃねーんだ!ポルノ観ろポルノ!」とお叱りを受けることを繰り返しております、はい。 で、何が言いたいかというと、『恋文』は高評価なんですが、でもやっぱり70年代の映画に見える。 1985年の映画でしょ?森田芳光『それから』と同じ年ですよね? 公開当時に観てたら「古臭い」って切り捨てていたかもしれません。

80年代って、映画でも音楽でも、まだ70年代カルチャーの残り香が漂っていた気がします。シティ・ポップとムード歌謡が混在しているみたいな。 杉山清貴とオメガトライブに並んで内山田洋とクールファイブがいる感じ。この例えが正しいかどうかは謎だけど言ってみたかっただけ。

そう考えると、この映画は古臭いわけじゃなかったんだ。 高校生のボクには理解不能な「男と女の機微」を、70年代を謳歌した一世代上の「大人」に向けて描いた映画だ、ということに思い至りました。

(2021.09.26 神保町シアターにて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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