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[コメント] 野蛮人のように(1985/日)

薬師丸ひろ子の『シャレード』。時代感が痛すぎて観ていて辛い。(自分の長いレビューも痛くて辛い)
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私、かれこれ40年近く薬師丸ひろ子ファンをやっていますが、実はこの映画、2017年3月31日に“初”鑑賞。近所の映画館でやってた「ミステリ劇場へようこそ」の中の一本で上映されてたので行きましたよ。いそいそ。ちょうど受験生だったせいで観てなかったんですよ。 いや、分かってましたよ。だいたいどんな映画か想像できてましたよ。てか、そもそも「ミステリ劇場へようこそ」のラインナップとして正しいのか?

薬師丸ひろ子が角川事務所を独立して初の作品。彼女自身が「模索していた時期」と言っている通り、薬師丸ひろ子研究の観点から言えば「独立後主演時代」の迷走期の1本。 本作は1986年の邦画興行第2位ですが、事実上は併映の『ビー・バップ・ハイスクール』が稼いだ数字(ちなみに1位はぶっちぎりで『子猫物語』)。集客の責任を一人で背負う「アイドル女優」として、『ねらわれた学園』(81年)以降、ずーっと主演映画が興行成績トップ10入りしている超絶人気女優だったわけです(併映の助けも大きかったけど)。 この吉永小百合と並ぶ日本の二大アイドル女優と呼んでも過言ではない薬師丸ひろ子“最後の”興行成績トップ10入り主演映画。この後、『紳士同盟』(86年)、『ダウンタウン・ヒーローズ』(88年)、『READY! LADY』(89年)と下降線を辿っていきます。 ところが90年代に入り、『病院へ行こう』(90年)で“主役一本背負い”から解放され、連ドラ『ミセスシンデレラ』や単発ドラマなどでの演技が評価され、「アイドル女優」から「本格女優」へと変貌していくのです(その結晶が『きらきらひかる』(92年))。 よく『Wの悲劇』(84年)が女優への転機と言われますが、研究者(俺)の観点では少し違う。本人の意識の中で転機だったと思いますが、世間的にはまだ「アイドル女優」の色眼鏡で見られていた。さらに余計な話をすれば、2000年代に入るとクドカンが『木更津キャッツアイ』で「薬師丸ひろ子というキャラクター」を利用するんです(『あまちゃん』も同様)。「薬師丸ひろ子なのに、薬師丸ひろ子だから、こんな役をやる」という洗礼を経て、自然体の大物脇役になっていく。

と、まあ、ここまで薬師丸ひろ子研究の成果を無駄に披露してきましたが、「角川独立後主演時代」の本作は、世間が求める「アイドル女優」の延長線上にあるんです。 好意的に言うなら、いつか観たような、予想の範囲内の、(アイドル映画として)観たいものを見せてくれる映画。今時の映画と違って、台詞じゃなくて画面で語ろうとする点も評価できる。

しかし圧倒的にツマラナイし、画面から溢れてくる時代感とか2時間サスペンス感とかが痛い。観ていて辛い。 それまでの日本映画の土着性から離れて、オシャレで都会的な映画を作ろうという意気込みは分かるが、それが六本木だとか湘南だとかモンローだとかヘップバーンだとかいうセンスも痛い。その当時の自分を思い出しても痛いし、今こうして薬師丸ひろ子を熱く語っているのも痛い。

本当は主題歌「素敵な恋の忘れ方」(実はカラオケでよく歌う)についても語りたいんだが、作詞作曲の井上陽水や編曲の武部聡志を語り始めると長くなるし、この映画の音楽を担当している早すぎた天才=加藤和彦についてや助監督が阪本順治だったことなども語りたいのだが、無駄に昔話を披露する自分が一番痛いのでやめにする。

(18.03.31 ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

(評価:★2)

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