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[コメント] バベットの晩餐会(1987/デンマーク)

2016年にデジタルリマスター版で初鑑賞。約30年前の公開時とは受け止められ方が異なるかもしれない。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なんてことない話なんです。それがいろんな深いものを提示してくる。なにこれ?すごい。映画的にすごく優れているとは思わないんですが、観終えた後にいつまでも残る。不思議な映画。

軍人と芸術家(歌手)が神父の家を訪れます。 しかし、彼らと娘達は結ばれない。 武力(軍人)と宗教は結ばれちゃいけないのです。芸術と宗教は親和性が高いのですが(芸術の発端は宗教だったりしますが)、これだってそれぞれ独立してこそ発展するのです。 武力、芸術、宗教は、国を成す重要な要素であり、相互に影響を持ちながらも、それぞれ独立していなければならない。

そしてこれは「捧げる物語」だと思うのです。

老姉妹は自分の人生をこの村に捧げます。 そしてバベットも、自分の残りの人生をこの村に捧げ、最後に残ったアーティストとしての魂を晩餐に捧げたのです。 晩餐を振舞った後のバベットは、ドヤ顔もせず、名誉や地位の回復なども望みません。いや、賞賛の言葉すら求めていない。ただひたすら、料理で誰かを幸せにするという“料理人の使命”を全うする。まさにアーティスト。ハリウッド映画じゃこうはならない。

この映画が公開された当時、日本はバブルの盛り。物質的な豊かさが心を貧しくした時代。 この「捧げる物語」は、ある種の“戒め”として受け止められたのかもしれません。 もっと謙虚に生きようよ。金より心だよ。ボロは着てても心は錦だよ。水前寺清子だよ。

一方、デジタルリマスター版が公開された2016年の日本。 自己中心的で他者を攻撃することに慣れた人々と、攻撃を恐れて萎縮する人々。言い換えれば、心の貧しさが物質的な豊かさまで奪った時代。 この「捧げる物語」は、時代の閉塞感を打ち破る一つのヒントを与えてくれているような気がします。 「魔女の食事だ!」みたいな先入観を捨てて皆もっと寛容になろうよ。自分に出来る最高の仕事をやっていこうよ。美味しい物を心から味わえる余裕を持とうよ。

あー、俺も宝くじ当たらないかな(<そこかよ)

(16.05.04 恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞)

(評価:★4)

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