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[コメント] キャバレー(1972/米)

巴里のアメリカ人』ならぬ「ベルリンのアメリカ人」。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まあ、『巴里のアメリカ人』の監督はライザ・ミネリの父親だしね。

「午前十時の映画祭」で2023年にもなって初鑑賞。素晴らしいショーを見せてもらった。ドラマと重なるようにステージ上で繰り広げられる歌と踊りがいい。この猥雑な感じが最高に素晴らしい。こんなショー大好き。

私は、ライザ・ミネリ演じるサリー・ボウルズに、『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリーが重なって見えたんです。オードリーよりライザ・ミネリの方がイメージに合っていた気がします。

トルーマン・カポーティが小説「ティファニーで朝食を」を書いたのが1958年。『キャバレー』の元の舞台「私はカメラ」は1951年(その原作小説「さらばベルリン」は第二次世界大戦中の1939年だそうですが)。つまり両方とも1950年代に描かれた「水商売の女性」というわけです。バリバリ大戦中に書かれた原作小説は「さらばベルリン」というタイトル通り、ナチス統治下の影響が色濃いのでしょう。読んでないから知らんけど。(ちなみに原作者のクリストファー・イシャーウッドというイギリス人はゲイだったそうです)

そうした一設定にすぎなかった「水商売の女性」が、1950年代に入ってブロードウェイ化の際に「女性の物語」として中心に据えられたのではないかと想像しています。偶然かもしれませんが、1950年代は「したたかに生きようとする女性」が描かれ始めた時代なのかもしれません。サリー・ボウルズとホリー・ゴライトリーはその象徴。正確には「したたかに生きようとする」けど、そうもいかない。「陽」の表の顔と「陰」の背景を背負った女性の物語。

これを観る少し前にポランスキーの『テス』を観たのですが、1850年頃から意志を持った女性が描かれ始めたという感想を持ちました。それから100年を経て、やっと「顔で笑って心で泣く」女性の悲哀が描かれるようになった気がします。あ!撮影は『テス』と同じジェフリー・アンスワースだ。偶然。『テス』はイギリス映画に見えたけど、『キャバレー』はドイツ映画に見えたよ。すごいな。

以上、全然『キャバレー』の感想になっていませんでした。

(2023.01.29 TOHOシネマズ日本橋にて鑑賞)

(評価:★4)

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