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[コメント] フィッシャー・キング(1991/米)

分断の時代の今こそ観てほしいファンタジー。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







公開時以来30数年ぶりに再鑑賞。「午前十時の映画祭」に感謝。ギリアム51歳頃の絶好調時の一作。

私は、いろんな面が「いい塩梅」の映画だと思っています。ギリアムでは希少な(当時は初の?)現代を舞台にした作品で、「リアル」と「ファンタジー」のさじ加減がちょうどいい。「重さ」と「軽さ」もちょうどいい。ロビン・ウィリアムズとジェフ・ブリッジスも絶妙にいい塩梅。コアなギリアムファンには物足りないかもしれないけど、これくらいがいい塩加減だと思うんです。ギリアム入門編としてもオススメ。まあ、CGの無い時代に無駄にスケールのでかい特撮をする「コスパ」の悪さは相変わらずですがね。

そしてなんといっても、脚本が美しい。最高に美しい「二重構造」。

劇中で「フィッシャー・キング」の寓話が話されます。よく知らんのですが、元は「聖杯伝説」のフィッシャー・キング(日本語訳「漁夫王」(イサナトリのオウと読むらしい))のようです。それはさておき、この寓話のオチの箇所「苦しんでる王様と気のいいウツケ者」のエピソードですよ。この「苦しむ王様と気のいいウツケ者」2人の関係が、ロビン・ウィリアムズとジェフ・ブリッジス2人の物語に重ねられるわけです。どっちが「気のいいウツケ者」なのか?これが実に美しい「二重構造」になっている。

そしてそこに重ねられる互いの「恋物語」。地下鉄駅構内の美しいダンスシーン!中華料理Wデートのブロッコリー・ホッケー!このイカレ女がハニー・バニーになるなんて信じられるかい?

初めて観た当時は(私も若かったし)観たことないものの連続で、散弾銃で頭ぶち抜かれて飛び散った脳みそを浴びるほどの衝撃があったんですが、正直、30数年ぶり再鑑賞の今回はそういう感覚はありませんでした。でも、今回の方が「闇」を皮膚感覚で感じてしまいました。

ラジオで扇動された者が暴挙に走る。そうした発信が人の命を奪うこともあるということをSNS時代の今、痛感しています。当時はSNSはなかったので発信者は限定的でした。ラジオDJとかね。でも今は誰でも発信できる。そういうのが怖く感じる。そうしたこととは無関係だと思うんですが、この映画の10数年後にロビン・ウィリアムズが自殺したことも影を落としているでしょう。

「いい塩梅」の映画なんですが、個人的には「恋愛映画」が色濃く印象に残っていたのですが、再鑑賞で「現代の闇」の方を色濃く感じたというのが正直なところです。

(2023.02.18 TOHOシネマズ新宿にて再鑑賞)

(評価:★5)

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