クライマックスでインタビューに登場した青島刑事が，すみれに輸血する血液を提供してほしいと呼びかけるこのシーン。本来，感動するシーンなんだろうけど，テレビを通して不特定多数の人々に呼びかけるのに血液型も言わないとは…。こういう些細な詰めの甘さが，この映画を出来を象徴しているように思える。

このシリーズはテレビドラマとしてはそれなりに面白いと思うが，はっきり言って劇場版はつまらないと思う。その理由は大きく言って二つ。

一つは，（このシリーズに限らないが）ヒットしたテレビドラマを劇場版にする場合，身の丈にあった話ではなく，やたらとスケールの大きい話にしてしまって”らしさ”をすっかり失ってしまっていること。この作品のウリは，決してスーパーヒーローではない，ごく普通の湾岸署の警官たちが懸命に頑張る姿を描いているところだと思うが，第１作目もこの第２作目も事件のスケールばかりが大きくなってしまい，彼らの持ち味があまり出ていないと思った。特にこの作品はひどく，冒頭の殺人事件がものすごい猟奇的殺人であるかのように期待させておきながら，見事に尻切れトンボになってしまっているし，思わせぶりに登場した吸血鬼男は一体何なのかとか，説明されずに終わってしまっている点があまりに多い。

二つ目は，このシリーズの大きなテーマである現場の警官と本庁のエリート官僚との対比が，実に型にはまった単純な描き方しかできていないという点。現場と上層部との間の溝を描くということと上層部を見るからにバカに描くのとは，ぜんぜん違うと思う。今回の真矢みき演じる女性キャリアなんかその典型で，いくら何でもあんなにバカな官僚はいないでしょ？　現場の気持ちや苦労を理解してくれないキャリアは多いと思うが，あれじゃシロウトが見たって明らかに捜査官としてもリーダーとしても無能だと思う。