どう言ったって、このエピソード１（以下、「Ep１」の様に表記）を旧３部作から切り離して、純粋に評価するなんて無理でしょう。旧３部作を観ていない世代ですら、旧３部作の存在を全く知らずに観ることができるだろうか？圧倒的な宣伝があった中で、たとえ本当に何も知らずに観たとしても、その後、Ep４〜６を意識することなく、言わんやEp２を意識せずにいられるものだろうか？

それを考えれば、Ep１を純粋に一本の独立した映画として評価できるのか？ということすら、無理がある様な気がしてならないのだ。

私自身、ほぼリアルタイムで、旧３部作を何度と無く観て、その世界にハマリ、特別編も３本とも劇場で観た上、Ep１への期待を否が応にも高められ、（寧ろ、自発的に高めたと言って良い位なのだが）、ネットでEp１の製作状況を調べ、予告編を観たクチである。更には、劇場で予告編が観たくなって、それほど乗り気じゃなかった別の公開作品を見に出かけたりもした。その癖、いざ公開が近くなれば、ネタバレを恐れて情報をシャットアウトし、一方で公開日がアメリカより遅いことに、正直悔しいと思ったりしながら迎えた１９９９年７の月…。

ノストラダムスの予言を馬鹿にしながら、一方でスターウォーズに多大な期待をかける私は、友人には馬鹿にされながらも、正に満を持してのEp１公開だったのだ。（実際に観たのは先行ナイト）

公開を前に、そこまでの行動をさせる映画が他にあっただろうか？もう、このことだけで、他に類を見ない映画なのである。 そればかりか、Ep１はこんな風なのではないか？あんな風なのではないか？と自分勝手に別バージョンEp１を想像する…。そんなこんな思いを胸に、遂に劇場の席に着く。そして、流行る気持ちを嘲笑うかのようなCMフィルムを我慢して、さあ、いよいよ、２０世紀ＦＯＸのファンファーレ！！そして、STAR WARSのタイトルと音楽！！！！！

もう、それだけでピークに達してしまったと言っても過言ではない。そんな思いを持たせてくれる作品が他にもあるなら、このEp１を大したことが無いと言うことも可能だろう。しかし、そんな作品を私は知らない。だからこれだけは断言できる。「なんだかんだ言っても、これは凄い作品なんだ。」と。

…………と、前置きはこのくらいにして、ここで冒頭のコメントを再確認。

>実は「全てがここから始まった」なんて誰一人思っていないのに、

Ep１からEp３の言わば新三部作の結末を、何も知らずに「どうなるんだろう？」なんて思っている人はいるのだろうか？「アナキンは将来ダース・ベイダーになり、ジェダイを虐殺するんだろ？」なんて、普通なら致命的なネタバレを平然と受け入れて、誰も問題にしない。このことからして、観客には、結末以上にその過程が重要視されていることは明らか。未知のEp２・Ep３は、既知のEp４〜Ep６より一層の深みを持っていなければならないという命題を背負ったまま、Ep１は公開されたのである。

>この作品がエピソード１として成り立っていること自体が驚きだ。

さて、重い命題を背負っていたが故、期待は高く、よって好評を得るのは難しいはずなのだが、幾多の批判は在るものの、興行的には成功と言えるだろうし、恒例のストーリー上の謎と注目度も維持していると言えるだろう。Ep４公開から２０年を越え、長年のブランクも何のそのでシリーズが書き加えられ、更に続けられようとしている。冷静に考えれば、とんでもないことだと思うのに「スターウォーズだからね。」の一言で当たり前のように受け止められる。

他の映画作品でこんなことが言える作品が無いことを承知しているのに。 それ故、どんな絶賛も、どんな批判も「スターウォーズのエピソード１だから」ということを踏まえて言っている気がする。 そして、各人が批評する時に参考にする映画は…多くの場合、現存する映画作品ではなく、自分勝手に想像したその人なりの究極のエピソード１であるということ…それを考えれば、個々人の究極のEp１に勝てなかったとしても、大善戦をしたという事実が、驚きなのだ。

いや、ほんと、冷静に考えれば考えるほど、凄い映画だと思うので候。